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原油高騰が示す、脱炭素社会に向けての世界の取り組み。

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原油価格の高騰が続いています。COVID-19の影響で、昨年2020年に急減した原油需要は、ワクチンの普及にともなう経済回復の過程で勢いを取り戻していましたが、そこに中国の電力危機、英国のガソリン不足、欧州の天然

ガス高騰などが加わり、WTI原油先物価格をいっきに押し上げました。今月に入り7年ぶりの高値をつけたあとは、80ドル台にまで上昇。米国では、原油価格上昇によりインフレが経済のリスクとして認識されてはじめています。

目次

OPECプラスは、既定方針を

7月に協調減産で合意

既定方針を上回る減産緩和(減産のペースを落とすことは原油生産が増えることにつながる)を期待する声もありましたが、OPEC(石油輸出国)とロシアなど非加盟の主要生産国でつくるOPECプラスは見送りました。これまでのOPECプラスの動きは、

  • 7月に協調減産を8月以降毎月40万バレルずつ縮小することで合意
  • 9月の閣僚会議では、上記の内容再確認
  • 10月4日、11月も従来方針を維持することをさらに確認

見送った理由として、OPECプラスが感染力の強い変異ウイルスや新たな感染の波の恐れもあり、再び原油の需要が減り、価格が下がることへの警戒を続けていることがあげられています。昨年の歴史的な出来事を経験すれば、当然かもしれませんが・・・  

原油価格がマイナスの事態に

昨年の4月、コロナ・ショックのために使う量が激減(需要が急減)した原油。先物の独特のシステムと大量に出た売りの圧力で、WTI原油先物価格は2020年1/8の高値1バレル=65.6ドルから、4/20の安値マイナス▼40.3ドルという歴史的な価格、異常値まで下落することになりました。その後はすぐにプラス台に回復し、4月末には18ドル台、5月35ドルと急激に価格を戻し、12月の暮れには50ドル近辺にまで上昇するわけですから、驚きです。

原油の生産量で駆け引き?

今年に入ってからはも上昇傾向は続き、原油高騰が招く不安材料が議論されるようになってきたのが最近の状況です。経済が正常時に戻る過程で需要回復が急激に進んでいるが、ウィルス感染が再度広がるかもしれないので

減産のペースは保つというのが短期的なOPECプラスの言い分ですが、しかし、一方で原油価格を支えてきた歴史的な環境が変わっていく、大きな転換点をむかえていると言う事実があります。

サウジアラビアの戦略

*背景色がピンクは、OPEC、グリーンのマーカーがOPECプラスです。

国名生産量(千バレル/日)
1.アメリカ17,045
2.サウジアラビア11,832
3.ロシア11,540
4.イラク 4,779
5.アラブ首長国連邦 3,998
6.中国 3,836
7.イラン 3,535
8.クウェート 2,996
9.ブラジル 2,877
10.ナイジェリア 2,109
出所*原油生産量2019年ランキング-BP統計(Statistical Review of World Energy 2020-世界の原油確認埋蔵量、生産量、可採年数より)抜粋

石油輸出国機構(Organization of the Petroleum Exporting Countries)の略称が、OPECです。オーストリア、ウィーンに本部があり、産油国の権利・利益を守るために1960年に設立された産油国のための国際機関。現在は13カ国が加盟。通常、6・12月に定例総会を開催。OPECの現在の加盟国、メンバーは、イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラと、リビア、アラブ首長国連邦(UAE)、アルジェリア、ナイジェリア、ガボン、アンゴラ、ギニア、コンゴの計13カ国となっています。そしてそれに、ロシアやメキシコ等の非加盟主要産油国10カ国(アゼルバイジャン、バーレーン、ブルネイ、カザフタン、マレーシア、オマーン、南スーダン、スーダン)を加えたのが、OPECプラスです。因みに、アメリカは反トラスト法のため、OPECプラスには加盟していません。

OPECプラスの中でもその生産量から見て、リーダー的な役割をはたしているのが、サウジアラビアです。過去を振り返ってみても、サウジは原油価格下落時には減産し、上昇時には増産によって原油価格を一定の範囲内で落ち着かせることに指導的な役割を果たしてきました。ところが・・

NHK.JPから↑

サウジアラビアの事情

サウジアラビアが減産を一番多くすることが可能で増産の舵取りも相変わらず主導権を持っていることは明らかです。サウジアラビアは長年続いていた、原油価格の低迷や脱石油を目指した巨額の設備投資、さらにはイエメ

ン内戦への介入のための軍備増強によって財政赤字が続いています。少し、乱暴な言い方をすれば、原油価格が上昇さえすれば国家財政が潤い、赤字を減少させることができます。OPECプラスのによる、現在の原油価格の水準は、サウジを含む原油生産国にとって居心地の良い水準なのかもも知れません。

アメリカの事情

『シェール革命』で今や世界最大の原油生産国となった米国ですが、バイデン政権が重要課題として掲げる、気候変動問題への取り組みとして国有地・水域における石油・ガス鉱区のリース権や掘削許可等を制限をされてい

る状況にありシェール生産業者も原油生産を急速に拡大させるのに十分な投資ができていません。「単純に石油リグ(掘削装置)の数が足らない」と指摘する業界関係者がいます。原油価格の高騰に影響を与えるほどの生産ができないのが現状のようです。

世界的な環境政策へのシフト

脱炭素社会

温室ガスを排出する原油、天然ガス等化石燃料を国家産業としている国々やそれらをビジネスとしてきたオイルメジャー、シェール関連企業は、世界的な環境政策シフトへの対応を迫れていますが、従来の設備投資ができない上に、環境への対策として新たなコストも考えなけばなりません。昨年らいの原油高騰は、新型コロナによる

需要不足からいっきに、普通の状態に戻る過程で、供給が追いつかないと言う短期的な理由が背景にありましたが、大きな流れの中で気候変動、脱炭素社会に向けて化石燃料がもはや、時代に対応できない、過去のエネルギーとしての烙印を押されたことを確認する出来事として、歴史に刻まられることに。そして数年後今の状況を振り返った時に、価格の高騰が原油生産国にとって、束の間の喜び?になっているかも知れません。

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