どんな米国株に投資したらいいのか、アプローチ方法『投資のヒント』の2つめは、『先人の知恵に学ぶ』です。人は多かれ、少なかれ「アニマルスピリット」を持っています。それは人類を進歩させてきたパワーでもあるのですが、その反面、冷静な判断を失わせ、合理的な判断をする妨げになったりします。市場が大きく荒れている2022年秋、そんな時に、指針となるのがバフェットの投資スタイルです。
先人の知恵に学ぶ
先人の知恵に学ぶ理由
- うまくいっている人と同じことをすると良い
- 歴史に学ぶことは、過ちを繰り返さない、冷静な判断ができる
- オリジナルではないが、堅実。長期投資のヒントがある
バフェットのバークシャー・ハサウェイとは?
バフェットは、「株価が安い時にポジョションを増やすことの素晴らしさ」を常に説き、「投資を楽しむ」気持ちをずっと忘れていません。そんな彼と彼のチームが投資している企業の株は定期的に報告されており、興味がひかれます。
*コングロマリット→多角的経営を行う複合企業のこと
年次報告書(ANNUAL REPORT)より
ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイ(ティッカーシンボルは、BRK/A,B)。バフェットは同社の筆頭株主で会長兼CEO。この会社を理解するのは、少し面倒かもしれません。ハサウェイの株主に対しバフェットはそのあたりのところを年次報告書の「バフェットの手紙 」で丁寧に伝えてくれています。
ここでわかることは、バークシャー(バフェット)は、常に投資先を探していて、それが条件を満たすものであれば、その株を100%購入したいと考えているがなかなか出会えない。ならば、大半の株式保有している支配下の会社、事業体に資金を投入する。設備投資等によって事業を拡大できる余地があればそちらを優先する。
バークシャーは子会社とそれ以外の投資先の両方を持つ、つまり支配下にある事業(損害保険事業や鉄道輸送業など)と支配していない事業の集合体として存続します。そのためバークシャーは、*コングロマリットと呼ばれますが、バフェットは典型的なコングロマリットを嫌い、またバークシャーはそれらとは全く違うと説明しています。
バフェットは会社全体を所有しない、つまり傘下におさめない企業への投資を積極的に進めています。
気まぐれな株式市場でより楽しく、儲ける!?
それよりも、気まぐれな株式市場で、私たちの基準を満たす上場企業の、支配権を持たない大規模なポジションを購入する機会の方が多いのです。支配的な企業であれ、株式市場を通じて大規模な株式を取得する企業であれ、バークシャーのコミットメントによる業績は、購入した事業の将来的な収益によって決定されることになります。
-2019年版の手紙より、一部抜粋DeepLで和訳
“素晴らしい事業の非支配部分を所有することは、限界のある企業を100%支配することに比べ、より収益性が高く、より楽しく、はるかに仕事が少ないことを確信した”
-2020年版の手紙より一部抜粋DeepLで和訳
気まぐれな株式市場に参加する理由は、極めてシンプルのようです。アップルをはじめとする宝石のような企業が選ばれ投資先となり、世界の投資家に注目を浴びるバフェット、バークシャーのポートフォリオになります。
バフェットが選んだ企業
バフェットの会社、バークシャー・ハサウェイがどんな株を保有しているかをチェック!それは米国証券取引委員会(SEC)に提出されます、株式保有報告書『フォーム13』で確認できます。直近の報告書によると、
表にすると
銘柄名(シンボル) | *最初の保有報告 | 持分比率 | 構成比率 | 市場価値 |
アップル(AAPL) | 2016.Q1 | 5.53% | 39.43% | 1,223億ドル |
バンク・オブ・アメリカ(BAC) | 2017.Q3 | 12.54% | 10.13% | 314億ドル |
*コカ・コーラ(KO) | 2001.Q1 | 9.23% | 8.11% | 252億ドル |
シェブロン(CVX) | 2020.Q4 | 8.22% | 7.53% | 234億ドル |
*アメリカン・エキスプレス(AXP) | 2001.Q1 | 20.13% | 6.77% | 210億ドル |
オキシデンタル・ペトロリアム(OXY) | *2022.Q1 | 29.05% | 6.23% | 193億ドル |
クラフト・ハインツ(KHC) | 2015.Q3 | 26.60% | 4.00% | 124億ドル |
※持分比率(Ownership)はその企業株全体の何%を保有するかを示し、構成比率(of Portfolio)はバークシャーが保有する企業の株のうち(ポートフォリオ)、何%になるかを示すものです。*他サイト等より抜粋、管理人が作成
*基礎となるコカ・コーラ株の購入は1994年までに7年かけて行われ、4億株、総額13億ドル。同様にアメリカン・エキスプレス株は1995年までに、1995年までに総額13億ドル購入。ー*は、2023.3.19追記したところです。
上位7銘柄で全体の82%を占めています。聞いたことのある日本でもお馴染みの企業が並びます。普通の感じがしますが、よく調べると、いずれも強力なその企業独自の製品・サービスを持ち、かつそれぞれの分野では、強力な競争力を誇っている会社と言えます。
円グラフで見ると
バフェットのお気に入りとクールな選択
- 「家族の宝石」とまで呼ぶようになったアップルをさらに買い増し
- シェブロン、オクシデンタルのエネルギー関連を大幅買い増し
- 同じ分野でも、全て売り切ってしまうものもあれば、さらに投資額を増やす企業も
- フィンテックのデジタル金融サービス企業やゲームやストリーミング等のエンタメ企業へ投資
※株価は9月以外は、いずれもの月末の終値です。チャートにカーソウルをあわせると株価がわかります。
アップル🍎をもうひとかじり
バフェットがアップル株にはじめて投資をして話題となったのが、2016年5月でした(1月~3月購入分 1,100億円)。株式分割を考慮した当時の株価は大体20ドル台。今年初めには180ドル前後で幕開け、5月CPIの発表による『CPIショック!』で、一時130ドル割れを経験したとはいえ、見事なパフォーマンスです。
驚くべきことは、ハサウェイのバフェットチームは「株価が安い時にポジョションを増やすことの素晴らしさ」を実践していることです。CPIショック等の不安な時期に「買い」と判断し、この第二四半期(今年4-6月期,Q2)に400万株を買い増し、およそ8億9500万株までに増やしています。バークシャーが保有する米国株ポートフォリオは全体で、3,000億ドル規模ですが、アップル株がおよそ40%を占めるまでになっています。
アップル自体の配当や分割、自社株買い(もちろん値上がりの効果も)によって、バークシャーが保有するアップルの直近の市場価値は1,200億ドル(=約17兆円)までになっており、この投資がいかに成功だったかを証明しています。
エネルギー関連を積極的に
バークシャーは、今年、石油大手シェブロン(CVX)と石油・ガス資源の取得、探鉱、開発企業を行う、オクシデンタル・ペトロリアム・コーポーレーション(OXY)の株式へ250億ドルほど投じています。シェブロンは、Q1,Q2と着実に株数を増やし2億株近くになり、市場価値は230億ドル(3兆2000億円ほど)。またオクシデンタル・ペトロリアムも、直近でも1億株以上を買い増しをして、2億7000万株を超える保有となり、持株比率もほぼ30%とな
りました。短期的にはロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰、長期的な代替エネルギーへの切り替えの難しさを考慮すると、したたかさでクールな投資戦略と言わざるを得ません。因みに、シェブロンの株価はNYダウ採用銘柄の2022年の上昇率で、ダントツのパフォーマンス38.5%(配当込み)、オクシデンタルに至っては、株価は2.45倍にもなっています。(いずれも8月末まで。上記チャートを参照してください。)
※シェブロンは、前回ご紹介した『ダウの犬』銘柄で35年連続増配をしている優良企業でもあります。8月までに1.42ドルの配当を既に3回。4回として5.68ドル。仮に、9/27の価格でシェブロンを購入し来年の9月までに、今年と同様の配当が出ているとしたら、配当利回りは(5.68÷141.02×100)=4.03%になります。
見直しと次の宝石候補!?
銀行株の見直し
バフェットのバークシャーは、この2年ほどの間に銀行株の見直しを実行。JPモルガン(JPM)、ウェルス・ファーゴ(WFC)、ゴールドマン・サックス(GS)の大口保有の株を売却し、前述のバンク・オブ・アメリカを大幅に買い増し、シティグループ(C)も持ち高も増やしています。その意図は、今はわかりませんが、何年か後に明らかになるかもしれません。・・・
次の宝石候補?
前述のオクシデンタル・ペトロリアム以外で、昨年2021年のQ4から今年のQ1,Q2にかけて、持株比率を上げたのは
- アリー・ファイナンシャル(ALLY)–自動車ファイナンス、保険等のデジタル金融サービスを主に北米で展開。
- パラマント・グローバル(PARA)–旧バイアコムCBS。メディアおよびエンタテインメント事業を世界で展開。
- アクティビジョン・ブリザード(ATVI)–世界各地域で、インタラクティブなエンタテインメントコンテンツやサービスの開発、出版をおこなっています。
です。次の宝石候補となるか、どうか引き続きウォッチしていきたいと思います。最後に、先人の知恵として、彼のアドバイスを!
Be fearful when others are greedy and greedy only when others are fearful.
『他人が欲深くなっているときは、恐れ、他人が恐れているときは欲深く』
-ウォーレン・バフェット
※このブログは特定の企業への投資を推奨するものではありません。また、あくまでも過去のデータであり、将来の運用成果を保証するものではありません。
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