6月第1週の米国株市場動向:雇用統計と利下げ観測の行方【6/3-7】
6月3日から7日の米国株市場は、景気指標や雇用統計、FRBの利下げ観測に神経質な動き。主要株価3指数を中心に、不安定な投資家心理と個別株の動向を探ります。
目次
週末のマーケット
6/7の株式、為替、金利
ダイジェスト
*日付をクリックするとその日のマーケットの動きがわかります。
月曜日
- NYダウは(0.29%)安の3万8571ドル03セントで週をスタート。
- 米経済指標が景気減速を示し、景気敏感株や消費関連株に売り。
- 雇用関連指標の発表を見極めたいと買いを手控える動きも。
- 米経済指標5月のISM製造業景況感指数は48.7で前月から0.5ポイント悪化(市場予想49.6)
- 米金融政策が経済活動にブレーキをかけているとの見方。
- 前週末の急伸後の調整売りが見られた。
- 週内は重要な経済指標の発表が控えており、様子見の姿勢が強い。
- エヌビディア(NVDA)が上昇。CEOのジェンスン・ファン氏が新しいAI向け半導体の投入計画。
- ゲームストップ(GME)が21%高。特定の人物が1億1600万ドル相当の株を保有していると報じられる。
- ニューヨーク証券取引所でバークシャー・ハザウェイ(BRK-A)など個別株の取引が技術的な問題で中断。
- シェブロン(CVX)が原油先物相場の下落を受け売られる。
- 景気敏感株のダウ、キャタピラー(CAT)消費関連株のホーム・デポ(HD)やウォルト・ディズニー(DIS)が下げた。
- アマゾン・ドット・コム(AMZN)とアップル(AAPL)が上昇。
- マイクロン・テクノロジー(MU)やメタプラットフォームズ(META)が買われる。
火曜日
- ダウ平均反発
- 労働需給の緩和を示す雇用指標の発表により、利下げ時期が遅れる懸念が後退。
- 4月米雇用動態調査(JOLTS)では非農業部門の求人件数が805万9000件に減少し、2021年2月以来の低水準。
- 賃金がインフレの逆風を引き起こす可能性が低いとの見方。
- 労働市場の過熱感が薄れ、FRBが利下げしやすくなるとの観測。
- 長期金利が4.3%台前半に低下(前日終値は4.40%)。
- 金利と比べた株式の相対的な割高感が薄れ、米株相場を押し上げる。
- 米経済の減速を示す指標の発表が相次ぎ、景気先行きへの不安が投資家心理の重荷に。
- アトランタ連銀の「GDPナウ」は4~6月期の成長率予測を前期比年率で1.8%に下方修正。
- ボーイング(BA)、ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)が上昇。
- ハネウェル・インターナショナル(HON)もアナリストの目標株価引き上げで買われる。
- ダウ(DOW)、JPモルガン・チェース(JPM)、シェブロン、キャタピラーが下げる。
- エヌビディアとアルファベット(GOOGL)が上昇。
水曜日
- ダウ平均続伸
- 5月のADP全米雇用リポートで非農業部門の雇用者数が前月比15万2000人増。
- 労働市場の過熱感が薄れ、インフレ圧力が和らぐとの見方が広がる。
- 米サプライマネジメント協会(ISM)の5月非製造業景況感指数は53.8に改善。
- スタグフレーション懸念が和らぎ、投資家心理を支える。
- 長期金利が一時4.2%台後半に低下。
- 高PERのハイテク銘柄を中心に株式の相対的な割高感が薄れる。
- AI関連銘柄で、エヌビディアが5%高で時価総額3兆ドル台に。
- ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)もAI関連製品の業績貢献を示し上昇。
- インテル(INTC)マイクロソフト(MSFT)アマゾン・ドット・コム(AMZN)アップル(AAPL)が買われる。
- ゴールドマン・サックス(GS)ハネウェル・インターナショナル(HON)も高い。
- アメリカン・エキスプレス(AXP)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)マクドナルド(MCD)は下落。
- ナスダック総合株価指数は330.858ポイント(1.96%)高の1万7187.905で終え、過去最高値を更新。
- S&P500種株価指数は62.69ポイント(1.18%)高の5354.03で終え、5月21日以来の最高値を更新。
木曜日
- 利下げ期待と雇用統計
-週次新規失業保険申請件数が予想を上回り、利下げ期待で買いが進む。
-雇用統計発表を控え、利益確定売りが発生し、ダウは底堅く推移。
- セクター別の動向-自動車・自動車部品、小売りが上昇、資本財が下落。
- JMスマッカー(SJM)コスト削減とホステス・ブランズ購入効果で四半期決算が予想を上回り上昇。
- ウォルマート(WMT)アナリストの目標株価引き上げで小幅高。
- ゲームストップ(GME)キース・ギル氏のライブ配信計画報告で大幅上昇。
- ロビンフッド(HOOD)個人投資家からの人気で上昇。
- 半導体・AI関連の動向エヌビディア(NVDA)CEOの自社株売却計画とAI関連の反トラスト法違反調査報道で下落。
- ドキュサイン(DOCU)四半期決算発表後、1株利益が予想を上回るも見通しが嫌気され、時間外取引で売り買いが交錯。
金曜日
- 7日の米株式市場でNYダウ工業株30種平均は前日比87ドル18セント(0.22%)安の3万8798ドル99セントで反落。
- 5月の米雇用統計発表で就業者数の伸びが市場予想を上回り、利下げ時期の遅れ観測が重荷に。
- 米景気の減速懸念は和らぎ、下支えに。
- 非農業部門の雇用者数は前月比27万2000人増(予想:19万人増)。
- 平均時給は0.4%増(予想:0.3%増)。
- 失業率は3.9%から4%に上昇、労働市場の底堅さを示す。
- インフレ圧力継続の懸念から、FRBの利下げ判断にはさらなる労働需給の緩和データが必要とされ、9月利下げ期待が後退。
- 米債券市場で長期金利は4.4%台前半に上昇(前日終値:4.29%)。
- 金利と比べた株式の割高感が意識され、ハイテク株に重荷。
- 米経済の減速指標の発表が相次ぎ、雇用統計を受けて景気下振れ懸念が和らぐ。
- アルファベット(GOOGL)、ネットフリックス(NFLX)が下落、エヌビディアは株式分割を控え小幅安。
それでも、S&P500とナスダックは史上最高値更新
FOMC(6/11-12)
6月3日から6月6日にかけては、労働市場の需給緩和を示す経済指標の発表を受け、金融市場の利下げ期待が回復しました。さらに、6月5日のカナダ中央銀行と6月6日の欧州中央銀行(ECB)が利下げを決定したことで、主要先進国が続々と利下げを行い、米国も次に利下げするのではないかというムードが広がりました。
この影響で、債券市場では国債の利回りが低下し、S&P 500指数などの株価主要指数は史上最高値を更新。また先週6月1日からはFOMC前の*ブラックアウト期間(金融政策に関して踏み込んだ発言をしてはならない期間)に入り、これまで何度も市場の利下げ期待を戒めてきたFOMCメンバーの発言が途絶えたこともプラスに働いたようです。しかし
週末7日金曜日の5月の雇用統計で、非農業部門の雇用者数や平均時給が予想を上回ったことで、再び強い経済指標が憶測を呼び、インフレ圧力継続の懸念から、FRBの利下げ判断にはさらなる労働需給の緩和データが必要との憶測をよび、9月利下げ期待が少し後退し、週末を迎えています。
いずれにしても、11-12日にFOMCでのパウエル議長等の発言に注目が集まりますが、マーケットは利下げが9月に行われる可能性を探り、高値への警戒を不安視する、神経質な展開になることが予想されます。
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