10-12月期の売上高は前年同期比18%増の好成績を達成し、為替の影響を除いても16%増となりました。主力3部門は市場予想を上回る成長を達成し、OpenAIへの投資が成果を見せています。AIの幅広い展開が増収率を押し上げる要因に繋がりました。(マイクロソフトのティッカーシンボルはMSFTです。)
時価総額3兆ドル超えは、クラウドとAI関連の貢献が大!
決算のポイント
- 売上高は620億ドル。前年同期比で18%増加、Q1(7-9月)の13%増から成長が加速。
- 3部門全てが市場予想を上回る業績を達成。
- クラウド版Office365企業向けが17%、Azureが28%それぞれ増収。AI関連の貢献大、Q1から加速。
- 次の四半期(Q3)の売上高計画は市場予想に未達も、24/6通期の営業利益率は前年比から改善見込み。
決算概要
2023/10-12月(Q2) | 2022/10-12月(Q2) | 前年同期比 | |
売上高 | 62,020 | 52,747 | +17.6% |
営業利益 | 27,032 | 20,399 | +32.5% |
当期利益 | 21,870 | 16,425 | +33.2% |
EPS | 2.93 | 2.20 | +33.2% |
*Yahoo Finance,**マイクロソフトのIR等で確認しています。
- 売上高620億ドルで前年同期比で18%増加しQ1(7月-9月)の13%増からさらに成長。
- 為替影響を除いた実質成長率は16%。
- PBP(プロダクティビティ&ビジネス・プロセス)部門は12%増
- IC(インテリジェント・クラウド)部門は19%増
- MPC(モア・パーソナル・コンピューティング)部門は18%増と、全部門が市場予想を上回る。
- PBPとIC部門の営業利益は市場予想を超えるが、MPC部門は未達。
- *Copilotを搭載したクラウド版Office365企業向けは17%増収で、市場予想を上回るがQ1からは減速。
- 為替影響除外後のAzure等の総合クラウドサービスは28%増収で、会社計画と市場予想を上回る。
- AI関連の貢献で増収率がQ1の3%ポイントから6%ポイントに拡大。
- Q3(1月-3月)の売上高計画は市場予想に未達もAzure等は前年同期比で28%増収(市場予想:27%増収)、Office365企業向けは約15%増収(市場予想:16%増収)。
- 2024年度通期の営業利益率は従来予想の横ばいから上方修正。
マイクロソフトの3つの事業
マイクロソフトの事業は主に以下の3つのセグメントに分類されます。事業の説明と10-12月期の各部門の売上は下記の通りです。円グフも参照に。
1. プロダクティビティとビジネスプロセス:Productivity and Business Processes PBC–192億ドル
この部門は、Office製品群(Office 365、Microsoft Office)、Dynamics製品群(Dynamics 365、ERP、CRMサービス)、およびLinkedInを含む。これらの製品とサービスは、個人ユーザーと企業ユーザーの両方に対して、生産性の向上、コミュニケーション、およびビジネスプロセスの管理を支援することを目的としています。
2. インテリジェントクラウド:Intelligent Cloud IC–259億ドル
インテリジェントクラウド部門は、主にクラウドサービスとサーバー製品に焦点を当てています。この部門には、Microsoft Azureクラウドプラットフォーム、Windows Server、SQL Server、System Center、GitHub、サーバー製品とクラウドサービスに関連するサポートサービスが含まれます。このセグメントは、企業がクラウドベースのコンピューティングリソースを利用して、より効率的に運営し、イノベーションを推進するのを支援します。
3. モアパーソナル コンピューティング:More Personal Computing MPC–169億ドル
パーソナル コンピューティング部門は、*Windowsオペレーティングシステム、デバイス(Surface製品群)、ゲーム(Xbox製品群、Xbox Live)、検索(Bing)、およびエッジブラウザなどの製品とサービスを含みます。このセグメントは、エンドユーザーの日常生活と仕事において、よりリッチな個人的なコンピューティング体験を提供することを目指しています。
Windows OEM売上は、マイクロソフトがパソコンメーカー(OEM: Original Equipment Manufacturer)に対してWindowsオペレーティングシステムのライセンスを販売することで得られる収益。これにより、新しいPCが市場に出るときには既にWindowsがインストールされている状態になります。Windows OEM売上は「More Personal Computing」部門の重要な収益源の一つとなっています。
これら3つの事業部門は、マイクロソフトが提供する製品とサービスの広範なポートフォリオを通じて、個人ユーザー、企業、開発者に多様なソリューションを提供することを可能にしています。各セグメントは、特定の市場ニーズに対応する製品とサービスの開発に特化しており、マイクロソフトの事業戦略の中核を成しています。
部門別売上
*カーソルを合わせるとそれぞれの売上がわかります。
製品とサービスで分けるとこんな感じです。
- 売上高は620億ドル。前年同期比で18%増加、Q1(7-9月)の13%増から成長が加速。
- 3部門全てが市場予想を上回る業績を達成。
- クラウド版Office365企業向けが17%、Azureが28%それぞれ増収。AI関連の貢献大Q1から加速。
- 次の四半期(Q3)の売上高計画は市場予想に未達も、24/6通期の営業利益率は前年比から改善見込み。
時価総額3兆ドル達成の裏に、OpenAIあり!?
マイクロソフトとOpenAI
提携の流れ
マイクロソフトとOpenAIの提携に関する経緯を時系列に整理してまとめます。このパートナーシップは、人工知能技術の開発と応用において重要な意味を持ち、この提携により、AI技術の開発と普及が一気にペースを上げたと考えられます。
マイクロソフトとOpenAIの協力関係は、人工知能が社会や産業に与える影響を形作る上で中心的な役割を担っており、今後もこのパートナーシップによる相乗効果から新たなイノベーションが生まれることが期待されています。
2019年
7月マイクロソフトがOpenAIに10億ドルを超える投資を行うと発表。AIのブレークスルーを加速するためのAIとの独占的パートナーシップとの位置づけ。この投資がOpenAIがAI技術の安全な開発と民主化を進める上で重要なステップとなりました。
2020年
9月 OpenAIと提携し、GPT-3モデルの独占ライセンスを取得
10月Azure、Word Outlook Power Pointで利用可能な画像キャプションのAIブレークスルーを発表
2021年
5月 GPT-3モデルを利用した初の製品を発表
6月 GitHubがOpenAI Codexモデルを活用し、開発者を支援するAIペアプログラマCopilotの提供を開始
11月 AzureOpenAI Serviceを発表
2022年
5月 AzureOpenAI Serviceへのアクセスを拡大するとともにモデル数を増加し、新たな責任のあるAIシステムを導入
6月 GitHub Copilotの一般提供開始
10月 AzureOpenAI ServiceのDALL-E2、Designerアプリ、Bing image Creatorを発表
2023年
1月 Azure OpenAI Serviceの一般提供開始を発表
23日 マイクロソフトがOpenAIに100億ドル(約1.3兆円)を投じることが明らかに。100億ドルの投資は複数年をかけ行われる模様。この新規の投資によりOpenAIは290億ドルの評価へ。
マイクロソフトとOpenAIは両社の長期的なパートナーシップの第三段階。この投資はAIのブレークスルーを加速しその恩恵を広く共有することが目的とされています。
3月 GPT-4登場
5月 Microsoft Build 2023で、AIがソフトウェア開発と仕事の未来をどのように変革しているかが示され、50以上の新製品と機能が発表されました。Azure OpenAIの企業向け機能、Microsoft 365、Dynamics 365、およびPower PlatformにわたるCopilotsの導入が強調されました。
7月 OpenAIがGPT-4のAPIを誰でも利用できるように一般公開すると発表しました。
一方、
マイクロソフト、Anthropic、Google、そしてOpenAIはFrontier Model Forumを立ち上げこの新しい業界団体は、フロンティアAIモデルの安全かつ責任ある開発を確実にすることに焦点を当てています。
11月
6日 (現地時間) サンフランシスコにて OpenAI 初となる Developer Day (通称: Dev Day)が開催。最新の大規模言語モデルGPT-4Turboを発表。パフォーマンスを大幅に向上し、高性能かつ安価で128K(128000トークン)という膨大なコンテキストウィンドウに対応するとのことです。
具体的には「300ページ」もの長文の回答ができ、書籍の要約や長時間会議の要約を分割せずに認識させることが可能になります。また、以前のモデルでは学習データは2021年から2022年初頭まででしたが、今回のモデルは2023年4月までの対応となります。
新サービスGPTsも発表もされ、これはChatGPTを自然言語でカスタマイズするこものであり、自然言語でChatGPTと対話しながら、個人やコミュニティに応じた最適なGPTを生成することが可能としました。さらには、
GPTという人工知能技術を使って、自分だけのオリジナルのGPTを作成し、公開することができるプラットフォームのGPTストアも発表されました。
収益化もされるとの報道もあり人気のあるChatGPTを作成したユーザーには相応の報酬が支払われる仕組みのようです。現在の Apple Store のように様々なGPTが売買されることが予想されています。
そして時価総額3兆ドルへ
米国、世界経済を牽引すると言っても過言ではない、米国のビッグテック、いわゆるマグニフィセント7ですが、昨年の1年間の株価の上昇率は凄まじいものがありました。
*株価は、各月末の終値。カーソルを合わせると株価がわかります。単位ドル
2024年に入ってからは、株式時価総額でトップを争う、アップルとの年初来の騰落率の比較ではアップルが▼1.9%の下落に対しマイクロソフト+11.8%の上昇。1月に瞬間3兆ドルの時価総額を達成し約2年ぶりにアップルから首位を奪還してはいましたが、ついに2月9日にはアップルの過去の記録である、3兆900億ドル(2023年7月)を抜き、約3兆1,250億ドルと、記録を塗り替える名実ともに、世界一に返り咲きを果たしています。まさに、OpenAIへの出資により、AI分野におけるマイクロソフトの優位性をマーケットは評価している思われます。
余談ですが、2月9日現在、時価総額の世界1位と2位、マイクロソフトが3兆1248億ドル、アップルが2兆9162億ドル。2社は、S&P500種株価指数の全体の14%を占めるほど、他社を大きく上回る存在感を示しています。マイクロソフトとアップルの両社がアメリカの株式市場の成長を牽引し、世界のビジネスを語る上で、重要な役割を担っていることは間違いありません。
OpenAIの内紛!?
事件は、昨年に11/17〜22にかけて起こりました。
マイクロソフトの株価はこの一連の出来事をきっかけに動意づいた?と言っても良いかもしれません。この後は株価はAIの大きな流れに乗って、年明け以降も見事なパフォーマンスを見せています。上記チャート参照。
まとめと今後の展開
2019年7月にマイクロソフトがOpenAIに出資して以来技術進歩とともに、もの凄いスピードでAIの世界は広がっています。ここまではマイクロソフトOpenAI連合が優位に立っていますが最大のライバルであるアルファベット(GOOGL,GOOG)のグーグルも2月に入り、新ラインナップで対抗してきています。
- 自社の主要製品(Googleアプリ、Gmail、ドキュメントなど)に「ジェミニ」(Gemini )大規模言語モデルを統合すると発表。これはAIのマス市場への最大規模の展開。
- ジェミニの最強バージョン「ジェミニ・ウルトラ」へのアクセスが可能になる新サブスクプランを導入。
- GoogleはChatGPTの競合である「バード」を廃止し、ジェミニブランドに一本化。
- 14カ月前にOpenAIが発表したChatGPTの成功後、Googleはジェミニの開発を加速。ジェミニは音声、画像、テキストを扱うマルチモーダルモデルで、GPT-4をわずかに上回る性能を提示。
- ジェミニはユーザーが直接アクセスでき、質問やコマンドを通じて対話が可能。また、新サブスクリプションサービス「ジェミニ・アドバンスト」では、ジェミニ・ウルトラを利用可能。
- Googleはジェミニを用いた様々な使用例を紹介。ユーザーはこれらのツールを通じて、自分のニーズに合わせた使い方を見つけ出すことが期待されています。
また、他のビッグテックは違った分野からのAIへの参入でシェアを奪うことも想定され、まだまだ、戦いはこれからというところです。
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マイクロソフト、 AzureとOffice365が支える成長戦略!【7-9月期/Q1,2024】次世代クラウドビジネスの成功例となるか?
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