金利引き下げ開始のタイミング以上に、大型ハイテク株を中心とする決算の内容に米国株式市場は反応している状況です。FOMCでは「失業率が上がることなく、インフレを抑えている、良いバランス」とパウエル議長。
米国株動向【1月29-2月2日】1週間のレビュー
今週のポイント
- FOMCは予想通り政策金利を5.25-5.50%に据え置き
- ビッグテックの決算では、アルファベットとアップルが😅。マイクロソフト、アマゾンとメタが😁
- NYダウとS&P500が過去最高値更新
主要指標
指標 | 2/2 | 1/26 | 騰落率 |
NYダウ | 38,654.42 | 38,109.43 | +1.43% |
S&P500 | 4,958.61 | 4,890.97 | +1.38% |
ナスダック | 15,628.95 | 15,455.36 | +1.12% |
ドル/円 | 148.36 | 148.17 | |
米国10年国債利回り(%) | 4.02 | 4.14 |
アルファベットとマイクロソフトの決算と市場の動き
29日 MON
- NYダウが3日続伸し、最高値を更新。
- 米長期金利の低下により、株式の割高感が薄れ、買いに。
- 大型ハイテク銘柄の決算発表や米連邦公開市場委員会(FOMC)の控えで、NYダウは一時下落。
- 米長期金利が前週末の4.13%から4.0%台後半に低下。米財務省の借入額予測の下方修正で金利さらに低下。
- ハイテク株を中心に買いが入り、セールスフォース(CRM)やマイクロソフト(MSFT)が上昇。
- 大型ハイテク株の決算発表に期待
- 明日から開催予定のFOMC。政策金利据え置きが見込まれ、パウエル議長の記者会見に注目。
- ビザ(V)やウォルト・ディズニー(DIS)が上昇。一方、ベライゾン(VZ)やウォルグリーン(WBA)は下落。
- ナスダック総合株価指数が反発、15,628.045で22年1月以来の高値で終了。
- S&P500種株価指数が初めて4900台に乗せ、最高値を更新。
30日 TUE
- NYダウが4日連続で上昇し、過去最高値を更新。
- 金融株や消費関連株が主に買われ、NYダウを押し上げ。
- 大型ハイテク企業の決算発表に注目が集まり、市場は慎重な動き。
- JPモルガン・チェース(JPM)とゴールドマン・サックス(GS)の株価が上昇。
- アメリカン・エキスプレス(AXP)も株価上昇し、指数を支える。
- 一方で、マイクロソフトとアップル(AAPL)の株価は下落。
- 市場は米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備理事会(FRB)は政策金利の据え置きを予想
- ハネウェル・インターナショナル(HON)とトラベラーズ(TRV)、マクドナルド(MCD)の株価が上昇。
- ボーイング(BA)とインテル(INTC)の株価は下落。
- ナスダック総合株価指数は反落し、前日比118.148ポイント下落。
- アルファベット(GOOGL)とアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)の株価も下落。
<アルファベット決算(10-12期/Q4,2023)>GOOG,GOOGL
- 売上高-863.1億ドル(予想854億ドル )
- 1株当たり利益(EPS)-1.64ドル(予想1.59ドル)
- 主力広告事業(655.2億ドル)が予想(658億ドル)を下回る
- マイクロソフト、OpenAIチーム等とのこの分野での競争激化を懸念?
< マイクロソフト決算(10-12月期)/Q2,2024>MSFT
- 売上高-620.2億ドル(予想611億ドル )
- 1株当たり利益(EPS)-2.93ドル(予想2.78ドル)
- クラウド部門「Azure」好調
- 時価総額は3兆ドルで アップルを抜き首位キープ (1/30現在)「我々はAIについて語ることからAIを大規模に適用することに移行した」とサティア・ナデラCEO。
31日 WED
- NYダウは5営業日ぶりに下落。
- 米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利は据え置き。
- 声明が早期の利下げに慎重な姿勢示す。また、過去最高値圏で推移していたため、利益確定売りも広まる。
- ハイテク株への売りが目立ったことも、投資家心理を冷やす。特に、マイクロソフトなどのハイテク企業が慎重な業績見通しを公表したことが影響。
- NYダウの構成銘柄の航空機メーカーのボーイングは市場予想より小さな赤字幅を発表し、大幅に上昇。
- ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は続落。
FOMC(1/30-31)
- 政策金利は、5.25-5.50%に据え置き。
- FOMC声明では、追加の利上げに含みを持たせる文言が削除され、代わりに「インフレ率が持続的に(政策目標の)2%に向かっているとのより大きな確信を持つまで、政策金利の引き下げは適切でない」との文言が追加。
- 「利下げに入る局面である」ことが明確にされる
- 次のFOMC(3月19-20日)での「利下げ開始」可能性を残すものの、市場の見方は 5月(4/30-5/1)FOMC?
- FOMC後の記者会見で「インフレ動向を見極めたいとの姿勢を示し、利下げを始める時期について「3月会合の時までに確信に至っているとは考えにくい」とパウエルFRB議長 。このため、3月の利下げ予想確率が低下。
- 「失業率が上がることなく、インフレを抑えている」ともパウエル議長
これまでの政策金利(FF金利)の動き
FOMC開催月 | 幅 | 政策金利(*FFレートの目標誘導レンジ) |
2020.4~2022.1月 | 変更なし | 0.00~0.25% |
2022.3月【ゼロ金利政策解除】# 1 | +0.25% | 0.25~0.50% |
2023.1月 | +0.25% | 4.50~4.75% |
3月 | +0.25% | 4.75~5.00% |
5月 #10 | +0.25% | 5.00~5.25% |
6月 | 据え置き | 5.00-5.25% |
7月 | +0.25% | 5.25-5.50% |
9月 | 据え置き | 5.25-5.50% |
10月/11月 | 据え置き | 5.25-5.50% |
12月 | 据え置き | 5.25%-5.50% |
2024年1月 | 据え置き | 5.25-5.50%←現在の水準 |
1日 THU
- NYダウは1月30日に記録した過去最高値を更新。
- 米雇用指標の発表が、労働市場の緩和と物価上昇の減速予測を示唆したことが背景。
- 週間の新規失業保険申請件数は22万4000件で、市場予想を上回る。
- 2023年第4四半期の労働生産性は、単位労働コストが年率0.5%上昇し、市場予想を下回る。
- 米長期金利が低下し、約1ヶ月ぶりの低水準(10年国債の利回り3.8765%)を記録。
- FRBによる利下げ観測の後退にもかかわらず、株式市場は前日の下落から反発。
- ナスダック総合指数も反発し、前日比で197.63ポイント(1.30%)上昇。
- アップル、アマゾン・ドット・コム、メタプラットフォームズなどの大型ハイテク株は、AI需要の増加による業績期待で上昇。
- ニューヨーク・コミュニティ・バンコープは商業用不動産融資の損失で11%下落。
- セールスフォースやマイクロソフトは買われ、メルクは四半期決算好感で5%弱上昇。
- JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスは下落、
- ハネウェル・インターナショナルも四半期決算が振るわず下落。
アップル、アマゾン、メタの決算が示す今後の見通し
< アップル10-12月期決算/Q1,204>AAPL
- 売上高-1,195.8億ドル(予想1,180億ドル )
- 1株当たり利益(EPS)-1.46ドル(予想1.39ドル)
- 主力iPhoneの売上は、697億ドルで予想の686億ドルを上回る
- サービス部門の売上高、231.2億ドルは過去最高。
- 地域別売上では、北米と欧州で好調も、中国が予想を下回る
- インストールベース(iPhone,Mac,iPad等世界で使用されているアクティブデバイス)は、22億台を突破
< アマゾン/10-12月期 Q4,2023>AMZN
- 売上高-1699.6億ドル(予想1662億ドル )
- 1株当たり利益(EPS)-1.00ドル(予想0.78ドル)
- 主力オンラインストアの売上は705.4億ドル(予想690億ドル)
- 注目のクラウドサービス部門AWSの売上は、242億ドルでほぼ予想通り。
- 生成AI機能追加の効果で年末商戦はEC(電子商取引)とクラウドサービスが好調
- コスト削減と収益性の高いサービスへの集中で事業を再構築
< メタ/10-12月期 Q4,2023>META
- 売上高-401.1億ドル(予想390億ドル )
- 1株当たり利益(EPS)-5.33ドル(予想4.91ドル)
- 広告収入(387.1億ドル)が予想を上回る
- フェイスブックやインスタグラム等(meta ファミリーグループ)の月間アクティブ人数は12月末現在39.8億人
アップルは、iPhoneの売り上げ増が利益と売上高を市場予想を上回るも、中国での売上高が13%減と予想を下回ったことで不透明感が強まる今後の中国情勢の影響が懸念材料に。
一方アマゾンは、ブラックフライデーから年末商戦を好調に乗り切り、今1-3月期の見通しが市場予想を上回ったことで、メタは自社株買いや初の配当発表がそれぞれ好感されていました。
2日 FRI
- NYダウが続伸し、連日で史上最高値を更新。
- 1月の米雇用統計が予想を上回り、早期利下げ観測が後退。売りが先行もその後買い戻しが優勢、市場は上昇
- メタプラットフォームズ(META)やアマゾン・ドット・コム(AMZN)など、決算内容が好感
- 一部の大型ハイテク株が買われ、市場を押し上げる要因に。
- S&P500も過去最高値を更新。
- ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は大幅に続伸。
- 一部主要ハイテク企業の決算と1月雇用統計を受け、市場は寄り付き後まちまちの動き。
- 雇用統計とミシガン大学消費者信頼感指数確報値が予想を上回り、労働市場や消費の強さが再確認され、ダウは成長期待で上昇に転じる。
- 利下げ期待が後退もアマゾンやメタの好決算がマーケット全体を支え終盤にかけて上昇幅を拡大。
- メタは売上高が予想を上回る決算を発表、自社株買い増額や初の配当発表で大幅続伸。
- エヌビディア(NVDA)はAI需要増を期待し目標株価の引き上げで買われた。
- メタの時価総額は1970億ドル拡大し、国内市場で過去最大の増加幅を記録。
1月の雇用統計
- 非農業部門の雇用者数-前月比+35.3万人増(予想 18.5万人)
- 失業率 -3.7%(予想3.8%)
- 平均時給-前月比+0.6%増(予想 0.3s%増)前年同月比+4.5%増(予想 4.1%増 前月4.3%増)
- ビッグテックの決算では、アルファベットとアップルが😅。アマゾンとメタが😁
- FOMCは予想通り政策金利を5.25-5.50%に据え置き
- NYダウとS&P500が史上最高値更新
FRBのジレンマと今後の見通し
1月の雇用統計により、雇用者数が大幅に増加し、賃金も上昇していることがわかりました。労働市場が予想以上に強い動きを見せており、早期の利下げ可能性が低くなったと、とりあえず?マーケットは見ているようです。
雇用の増加は経済活動の拡大を反映し、賃金の上昇は消費を促進しますが、インフレ圧力を高めるリスクも伴います。FRBにとっては舵取りに神経質にならざるをえず、行き過ぎるマーケットにも注視しています。
今後の見通しや金融政策の方向性に影響を与える想定外のことがまたいつ起こるかはわかりませんが、今のところ市場は企業決算から、見える米国経済の強さに期待をかけています。
関連記事はこちらからも↓
1月第4週【1/22-26】米国株式市場レビュー:テスラとインテルの決算と市場動向
コメント