アッヴィ(AbbVie Inc.)は、バイオ医薬品分野で世界的なリーダーとして知られています。2024年第1四半期の最新決算はその成長と挑戦のバランスを如実に示しています。本記事では、アッヴィの最新決算報告をもとに、同社がどのようにして持続的な成長を維持しつつ、新たな挑戦に立ち向かっているのかを探ります。
プロフィール、主力製品と最新決算のハイライト
企業プロフィール
- 設立:2012年
- 上場:2013年
- バイオ製薬大手。2013年にアボット・ラボラトリーズから分離
- ティッカー・シンボル:ABBV
- 本社: イリノイ州ノースシカゴ
- 業務内容: 医薬品の創薬、開発、製造、販売
- セクター:ヘルスケア(Health Care)
- 年間売上高:543億ドル(約8.1兆円/2023年12月通期)
- 株式時価総額:2,941億ドル(6/13)
- ライバル:アムジェン(AMGN),イーライ・リリー(LLY)
- 日本での同業イメージ:アステラ製薬、第一製薬
主力製品
- ヒュミラ(Humira)-体の免疫システムに関わる病気を治療する注射薬です。この薬は、関節炎や皮膚の病気、お腹の病気など、体の免疫が自分の体を攻撃してしまう病気に対して使われます。
- スカイリッジ(Skyrizi)-皮膚にかゆみや赤い斑点が出る病気(乾癬)や、関節が痛む病気を治療する薬です。体内の炎症を抑えることで、症状を改善します。
- リンボック(Rinvoq)-関節の痛みや腫れを引き起こす関節リウマチや、皮膚の病気、腸の病気などを治療する薬です。錠剤として服用し、体の免疫反応を抑えて症状を和らげます。
- イムブルビカ(Imbruvica)-血液の癌(血液がん)を治療する薬です。特に、リンパ腫という血液の病気に効果があります。錠剤として服用し、癌細胞の増殖を抑える働きがあります。
- ヴェンクレクスタ(Venclexta)-血液の癌を治療する薬です。特に、慢性リンパ性白血病という病気に使われます。錠剤として服用し、癌細胞を死滅させる作用があります。
その他製品: - エステティック分野美容に関する製品を提供しています。
-ボトックス: しわを減らすための注射薬。筋肉の動きを一時的に弱めて、しわを目立たなくします。
-ジュビダーム: 顔のボリュームを増やし、しわを目立たなくするための注射剤。ヒアルロン酸が含まれており、肌にハリを与えます。 - 神経科学分野では、脳や神経に関わる病気を治療する薬を提供。
-Vraylar: うつ病や双極性障害の治療薬。脳内の化学物質のバランスを整えて、気分の安定を助けます。
-Duopa: 進行性パーキンソン病の治療薬。胃に直接投与されることで、症状を効果的に管理します。
-Ubrelvy: 成人の片頭痛の急性期治療薬。片頭痛の発作を迅速に和らげます。
-Qulipta: エピソード性および慢性片頭痛の予防薬。定期的に服用することで、片頭痛の発生を抑えます。 - アイケア目の健康をサポートする製品を提供。
-Ozurdex: 眼の炎症を抑えるための注射薬。特に、網膜の腫れを治療します。
-Lumigan/Ganfort: 開放隅角緑内障や高眼圧症の患者の眼圧を下げる目薬。
-Restasis: 涙の分泌を増やす目薬。ドライアイの症状を改善します。 - マヴィレット(Mavyret)-慢性C型肝炎ウイルス感染症の治療薬。1日1回の服用で、肝炎ウイルスを抑え、病気の進行を防ぎます。特に、ジェノタイプ1から6までの広範なウイルス型に対応。
- クレオン(Creon)-膵臓が正常に機能しない患者の消化を助ける薬。食事の際に服用し、食物の消化吸収を助けます。特に、膵臓酵素が不足している人に有効とされています。
- ルプロン(Lupron)-進行性前立腺癌や子宮内膜症などの治療薬。注射薬として使用され、体内のホルモンの調整を行うことで、病気の進行を抑えます。また、思春期早発症や子宮筋腫による貧血にも使用されます。
1-3月決算のハイライト
- 売上高
- 123億1,000万ドル(前年同期比+0.7%増)
- 希薄化後EPS(1株当たり利益)
- 調整後希薄化後EPS-2.31ドル同▼6.1%
- この減少には、買収した研究開発資産(IPR&D)等が含まれます。
- 主要製品別売上高
- ヒュミラ(Humira): バイオシミラー(後発バイオ医薬品)の競合品の影響により、
売上高は3.9%減の53億7,100万ドル。 - スカイリッジ(Skyrizi): 売上高-20億800万ドル。
- リンボック(Rinvoq): 売上高-10億9,300万ドル。
- ヒュミラ(Humira): バイオシミラー(後発バイオ医薬品)の競合品の影響により、
セグメント別業績
- オンコロジー(癌治療)
- グローバル売上高-15億4,300万ドル(同+9.0%増)
- イムブルビカ: 売上高-8億3,800万ドル。
- ヴェンクレクスタ: 売上高-6億1,400万ドル。
- ニューロサイエンス(神経科学)
- グローバル売上高-19億6,500万ドル(同+15.9%増)。
- ボトックス治療薬: 売上高は7億4,800万ドル。
- Vraylar: 売上高-6億9,400万ドル。
- UbrelvyとQulipta:-合計売上高は3億3,400万ドル。
- エステティック(美容)
- グローバル売上高-12億4,900万ドル(▼4.0%)。
- ボトックス化粧品: 売上高-6億3,300万ドル。
- ジュビダーム: 売上高-2億9,700万ドル。
大型買収の目的
アッヴィ(AbbVie)は、2023年から2024年にかけ、抗がん剤メーカーのイミュノジェン(101億ドルで買収)とバイオ医薬品企業セレベル・セラピューティクス・ホールディングスの相次いで買収。
この資金は150億ドル(およそ2.26兆円)の起債によってまかなわられました。イミュノジェンの買収は、癌治療分野でのポジションを強化し、特に卵巣癌治療市場でのリーダーシップを確立することにアッヴィの狙いがあります。
エラヒア(ELAHERE)
- 用途: フォーレート受容体アルファ(FRα)陽性のプラチナ耐性卵巣癌の治療薬
- 特徴: 抗体薬物複合体で、癌細胞に特異的に結合し、細胞を殺す効果を持つ
- 承認状況: FDAによる加速承認を取得しており、現在も臨床試験が進行中で、完全承認に向けてデータを収集中
イミュノジェンの技術とアッヴィの既存の研究開発能力を組み合わせることで、新たな治療法の開発が期待されており、将来的にはさらに多くの癌治療薬が市場に登場する可能性があります。
EPSガイダンス(会社計画)の引き上げ: (2024年第1四半期に発生した買収IPR&D等に関連する、1株当たり0.08ドルの不利な影響を含み)2024年の調整後希薄化後EPSガイダンスレンジを10.97~11.17ドルから11.13~11.33ドルに引き上げました。
まとめ
次の新薬開発へ
2024年第1四半期の決算は、全体としては堅調な成長を示していますが、ヒュミラの売上減少や一部の調整費用による影響も見逃せません。特に、*バイオシミラー市場の競争が激化する中でのヒュミラの売上減少は、アッヴィにとって新たな課題となりました。それでも新規製品や他のセグメントでの成長がこれを補完し全体としての安定した業績を支えています。
アッヴィは今後も新規買収や研究開発に積極的に取り組むことで、さらなる成長を目指しています。特に、がん治療や神経科学分野での新薬開発に投資家からも熱い視線を浴びています。
アッヴィはこれからも医薬品業界でのリーダーシップを発揮し、新たな治療法の開発と提供を通じ、患者の生活の質向上をサポート。持続的なイノベーションとグローバル市場での競争力強化に注力していくことが期待されています。
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