日本のGWの最中に行われた、FOMC (Federal Open Market Committee=”米連邦”公開市場委員会)でしたが、大方の予想どおり、政策金利であるFFレートの誘導目標を0.25%引き上げました。10回連続となる利上げ、昨年の3月からでは累計5%となりました。
FRBは市場に優しい!?
これまでのFOMC
FOMC開催日 | 幅 | 政策金利(目標誘導レンジ) |
2020.4~2022.1月 | 変更なし | 0.00~0.25% |
2022.3月【ゼロ金利政策解除】 | +0.25% | 0.25~0.50% |
5月 | +0.50% | 0.75~1.00% |
6月 | +0.75% | 1.50~1.75% |
7月 | +0.75% | 2.25~2.50% |
9月 | +0.75% | 3.00~3.25% |
11月 | +0.75% | 3.75~4.00% |
12月 | +0.5% | 4.25~4.50% |
2023.1月 | +0.25% | 4.50~4.75% |
3月 | +0.25% | 4.75~5.00% |
5月 | +0.25% | 5.00~5.25% ←今ここです |
5月のポイント
- 「いくらかの追加的な引き締めが適切」との文言が削除され、利上げ打ち止めの可能性が示唆
- インフレは少し和らぐ
- ただし、今のインフレの状況では利下げは適切ではない
- しかも、状況をみながら、追加利上げも排除せず
- 銀行部門は、3月上旬以降、全体として改善
「いくらかの追加的な政策引き締めが適切」という表現が削除されたことが重要と指摘するアナリストがいました。0.25%の引き上げを行いながらも、「今回で打ち止め」の可能性が示唆されたというものです。
また、パウエル議長は会見で、破綻が続き疑心暗鬼になっていることに対し、銀行セクターを引き続き注視するとしながらも、状況は3月上旬以降、全体として改善し、「金融システムは健全で打たれ強い」とアピールすることも忘れてはいませんでした。
FRBには、2つの責務(デュアル・マンデート:dual mandate)が課せられています。物価の安定と雇用の最大化です。FRBの歴史を見ても、多くの時代で物価上昇、インフレのコントロールに悩まされていたことがわかります。「物価の安定がなければ、経済は誰のためにも機能しない。」とFOMCで今回も含め、FRB議長が繰り返し発言をしてきているのは、まさに課せられた責務を果たすことにほかなりません。
利上げ効果
インフレ率の上昇を抑えることに成功
昨年からの急激なインフレに対する、連続の利上げの効果により、「インフレ率は昨年半ば以降、少し穏やかになってきた」今回のFOMCでの見解を証明するかのように、10日に発表された4月消費者者物価指数(CPI)では、4.9%と2年ぶりで5%を切りました。ただ「依然インフレ圧力は強く、目標の2%に戻すには長い道のりがある。」ともパウエル議長は、
FOMC後の会見で述べています。(FRBがインフレ率の指標としている、「コアPCEデフレーター」は、3月の数字で4.6%でした。)
*カーソルを各月のグラフに合わせると、何%かわかります。↑
マーケットの反応
ファースト・リバブリックバンクの破綻によって、5月1日~3日までは株価も調整を余儀なくされていました。JPモルガンによる救済と他の地銀による、前向きな対応が好感され、またFOMCを無事乗り切ったことも評価されたかもしれません。インフレ率の落ち着きが確認された後は、利上げの打止め、さらには利下げのタイミングまで市場では探り始めているようです。
*カーソルを日付のグラフに合わせると、S&Pのポイントがわかります。↑
株価は利上げに耐えて・・
少し、長い期間で株価の動きを見ていると、ゼロ金利が解除された2022年3月からの連続利上げを何とか吸収し、反騰の兆し?とも取れる動きのように見えますが、FRBの金融政策の金利の部分では、織り込んだとは言え、市場に大量に流れていたお金の量が減っていくという点については、まだ調整が必要となる可能性も否定できません。
2023年残りのFOM
今年は、あと5回FOMCが予定されています。各月の物価指数や雇用統計などをみてからの判断となりますが、インフレ退治のための利上げ継続か、金融安定のための利下げか、FRBが2つのジレンマに悩まされる状況は、しばらく続きそうです。
2023年 | 日付(すべて火曜と水曜日です) |
6月 | 13日〜14日 |
7月 | 25日〜26日 |
9月 | 19日〜20日 |
10月,11月 | 31日〜11月1日 |
12月 | 12日〜13日 |
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