AIブームを背景にS&P500とナスダックが取引時間中の史上最高値を更新した10日の米国市場。しかし、その直後に米中関係悪化懸念が広がり、主要3指数はそろって大幅下落しました。
エヌビディアやテスラなど主力ハイテク株が売られ、VIX指数は6月以来の水準に上昇しています。
今週(10月13-17日)は、AI関連株の反発力と米中摩擦・政府閉鎖リスクの綱引きが注目点になると思われます。
目次
今週の見通しと重要スケジュール【10/13-10/17】
注目ポイント
注目ポイント
●AI関連株の反発力:Nvidiaやマイクロソフトなど主力株の底堅さを確認
●米中関係・関税動向:トランプ大統領の発言に市場が敏感に反応
●政府閉鎖の長期化リスク:消費・雇用指標への影響に注視
●VIXと長期金利の動き:市場心理と安全資産需要の変化を見極め
●今週から7-9月期の米企業決算発表が本格化
今週の見通し
AIブーム継続の一方で「高値警戒」も
S&P500とナスダックは10日に取引時間中の史上最高値を更新(S&P500:6,764.58/ナスダック:23,119.91)。生成AIへの期待が続きましたが、週末の金曜日にかけ、上昇一服後、利益確定の売りに押されました。
10日には、エヌビディア(▼4.85%)やテスラ(▼5.06%)などの主力株は調整ムード。AI相場の牽引力が維持されるかが今週の焦点です。
米中摩擦とトランプ発言、警戒ムードを拡大
中国がレアアース輸出規制を強化したことを受け、トランプ大統領は「関税の大幅引き上げ」を警告。さらに「習主席と会談する理由はない」との発言が市場心理を冷やしました。
米中対立の再燃は企業収益への影響が大きく、今後の対中依存リスク見直しが進む可能性があります。
政府閉鎖長期化の影響が顕在化
政府機関の閉鎖は10日目に入り、一部で職員解雇も始まりました。
経済データの発表遅延や消費心理悪化が懸念されるなか、
投資家は安全資産に資金を移す動きを強めています。長期金利は4.03%に低下し、国債や金の買いも優勢です。
VIX上昇下の荒い値動き、押し目買いにも注目
*恐怖指数(VIX)は16.43から21.66へ上昇し、6月中旬以来の水準に。
ただ、過去にはVIXが20台に乗せた後に押し目買いが入りやすい局面もあり、短期調整後の反発余地も意識されます。
週明け以降の米国マーケットではAI関連株の持ち直しと安全資産への資金移動が交錯、
「一時的な調整」か「警戒ムードの定着」か、方向感が試される展開になりそうです。
*VIX(CBOE Volatility Index)指数は、米国株式市場のS&P 500指数を対象とするオプション取引から算出される「30日先の予想ボラティリティ」を示す指標で、投資家心理の「不安感」を数値化するため「恐怖指数」とも呼ばれています。通常の相場では10~20程度推移していますが、過去のVIXの最高値はリーマン・ショック時の約89.53であり、コロナ・ショック時もこれに近い水準で高騰しています。
今週の重要スケジュール
*政府機関閉鎖により、スケジュール通りに発表されない可能性があります。企業名は決算発表日です。
10月
14日(火)
・「入港料」制度開始
・「木材など」への追加関税適用
ブラックロック/JPモルガン・チェース/ゴールドマン・サックスG
ジョンソン・エンド・ジョンソン
15日(水)
・ページュブック(地区連銀経済報告書)発表
・9月CPI(消費者物価指数)
・G20【財務省・中央銀行総裁会議】〜ワシントン
バンク・オブ・アメリカ
16日(木)
・9月小売売上高
・9月PPI(生産者物価指数)
17日(金)
・9月住宅着工件数
・9月輸入物価指数
アメリカン・エキスプレス
先週のマーケットレビュー【10/6-10/10】
10日週末のマーケット
先週のおさらい
ポイント
- AI期待でS&P500とナスダックが連日最高値を更新
- 米政府閉鎖続く中でも市場は堅調に推移
- トランプ氏の関税示唆で米中摩擦懸念が再燃
- ハイテク・半導体株急落、金へ資金流入
- ビットコイン指数は、12万台も、週末は下落
*日付をクリックすると、その日のマーケットの様子がわかります。
ダイジェスト
月曜日
エヌビディア<NVDA▼1.11%,185.54ドル>
テスラ<TSLA+5.45%,453.25ドル>
・NYダウ▼0.14%
・S&P500+0.36%
・ナスダック+0.71%
・長期金利(10年国債利回り)4.15%
*株価、指数等は終値。(+↑上昇)(▼↓下落)は前日比です。
●ナスダック過去最高値更新
高値:22,991.71/終値:22,941.67
●S&P500
終値ベースでは過去最高値を更新していますが、取引時間中の最高値は更新できていません。
-景気敏感株や消費関連株に利益確定売りが出たほか、米長期金利の上昇も重荷に。NYダウは直近6営業日で800ドル超上昇し、過熱感から主力株に売りが出やすかったようです。
●来週以降主要企業の7-9月期決算発表が本格化
この日は好決算期待と、様子見の持ち高調整が交錯。
●アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD+23.71%,203.71ドル>
オープンAIとの資本・業務提携を発表し急騰。AI需要の強さが意識され、ハイテク株全体に買いが波及していました。
火曜日
エヌビディア<NVDA▼0.25%,185.04ドル>
テスラ<TSLA▼4.45%,433.09ドル>
・NYダウ▼0.20%
・S&P500▼0.38%
・ナスダック▼0.67%
・長期金利(10年国債利回り)4.12%
*株価、指数等は終値。(+↑上昇)(▼↓下落)は前日比です。
●政府機関閉鎖
長期化への懸念も、相場の重しに。給与保証の不透明感が景気下押しへの警戒を強め、リスク回避ムードを誘発。
●米国株式市場
過熱感もあり利益確定売りが優勢。
-ハイテク株に一部売りが出て、全体相場の重荷に。
-「割高感が強まる中、悪材料への反応が敏感になっている」との声。
-一方でFRBが追加利下げに動くとの観測が支えとなり、朝方は上昇局面も。
●テスラ(上記)株価下落
米国政府のEV購入補助金打ち切りに対応する形で主力車種の(モデルY)廉価版を発表するも、期待価格よりの高い価格との見方。米国でのEV需要鈍化予想を懸念する投資家も。
●オラクル<ORCL▼2.52%,284.24ドル>
クラウド事業の利益率が市場予想を下回るとの報道を受け下落。他のハイテク・半導体株にも売りが波及。
水曜日
エヌビディア<NVDA+2.20%,189.11ドル>
テスラ<TSLA+1.29%,438.69ドル>
・NYダウ-ほぼ変わらず
・S&P500+0.58%
・ナスダック+1.12%
・長期金利(10年国債利回り)4.12%
*株価、指数等は終値。(+↑上昇)(▼↓下落)は前日比です。
●過去最高値更新
-S&P500:高値6,755.64/終値6,753.72
-ナスダック:高値23,045.14/終値23,043.38(7日に
初の23,000ポイント台に到達。)
-NYダウは、一時は200ドル超の上昇も、米政府一部閉鎖の長期化を懸念し、消費関連株の下落が重しに。
●米政府機関閉鎖(8日目)
ホワイトハウスが一部職員給与を保証しない可能性も報じられ、消費心理の冷え込みを懸念。
●9月FOMC議事要旨
多くの参加者が年内追加利下げを支持。一部は慎重姿勢。
●エヌビディア(上記)
イーロン・マスク氏のxAIが200億ドル調達し、エヌビディア製GPUを購入するとの報道を受け、株価上昇。ジェンスン・ファン、エヌビディアCEOはAI需要の急増を指摘。半導体や電力株にも買いが波及。
●アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD+11.37%,235.56ドル=CPU、GPUなど高性能コンピューティング製品を開発・製造>と
●マイクロン・テクノロジー
<MU+5.84%,196.54ドル=DRAMやNAND型フラッシュメモリなどメモリ製品を主力に展開>が大幅高。アナリストによる目標株価引き上げを材料視。
木曜日
エヌビディア<NVDA+1.83%,192.57ドル>
テスラ<TSLA▼0.72%,435.54ドル>
・NYダウ▼0.52%
・S&P500▼0.28%
・ナスダック▼0.08%
・長期金利(10年国債利回り)4.14%
*株価、指数等は終値。(+↑上昇)(▼↓下落)は前日比です
●高値警戒感
FRBの追加利下げ観測やAI銘柄の上昇が相場を支えてきたが、前日にナスダックとS&P500が最高値を更新したことで高値警戒感が強まる。
●米政府機関の一部閉鎖継続
失業保険申請件数の発表見送りで、雇用関連データ不足が買い手控えにつながる。データ不足の中で上昇が続いた反動で利益確定売りも。
●来週から主要企業の決算発表スタート
悪い数字が出るなら、市場全体に調整の場面も。
●エヌビディア(上記)
UAE向け半導体輸出承認報道で株価は上昇。
金曜日
エヌビディア<NVDA▼4.85%,183.16ドル>
テスラ<TSLA▼5.06%,413.49ドル>
・NYダウ▼1.90%
・S&P500▼2.71%
・ナスダック▼3.56%
・長期金利(10年国債利回り)4.03%
*株価、指数等は終値。(+↑上昇)(▼↓下落)は前日比です。
●米中関係悪化への懸念
中国のレアアース輸出規制強化に対し、トランプ大統領が不満を表明、対中関税引き上げの可能性を示唆し、米中関係の悪化懸念が市場を圧迫。米中貿易摩擦が収益の逆風になるハイテクや消費関連を中心に幅広い銘柄に売りが出ていました
●安全資産への資金逃避?
トランプ大統領による対中関税の大幅引き上げ警告を受け、リスク回避の動きが一気に広がりました。株価は大きく下落する一方、安全資産とされる米国債や金には買いが入り、為替市場では円がドルに対して上昇し、前日の153円台から、円高、ドル安の151円台へ。
-トランプ大統領-習近平主席との会談に「やる理由が見当たらない」
-ハイテクや消費関連を中心に売りが拡大。主要指数が高値圏にあったこともあり、利益確定売りが拡大。特にナスダック(上記)が大幅に下落。
●米政府機関閉鎖が影響
政府閉鎖が10日目に突入。一部職員の解雇も始まり、米景気への懸念が強まりも週末要因も重なり終盤に下げ加速 終盤にかけて下げ幅を拡大し、安値圏で終了。NYダウ平均の日中値幅は1,100ドル超、
●VIX(恐怖指数=市場の不安心理を映すとされます。不安が高まった状態とされる20を上回り、6月中旬以来の高水準の)が前日の16.43から21.66に。
●テスラ(上記)中国関連として、売られる?
●クアルコム<QCOM▼7.29%,153.59ドル>
中国当局が、クアルコムによるイスラエル企業買収が独禁法違反の疑いとして調査を開始すると報道を受け、株価は下落。エヌビディア(上記)をはじめ、マイクロン(▼5.58%)、TSMC(▼6.41%)、AMD(▼7.72%)等、他の半導体関連株も売られていました。
関連記事はこちら(米国主要企業の7-9月期決算発表日)>>↓
note(ノート)
【2025年10月決算カレンダー】JPモルガン、テスラ、コカ・コーラなど注目企業の発表はいつ?(24日まで)|ア…
📅 主要米国企業の決算スケジュール(10月14日〜24日まで) 10月中旬から下旬にかけて、米国の主要企業から続々と決算が出てきます。金融・医療・通信・消費財・テクノロジ…
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