テスラ、Tesla(TSLA)は、第2四半期に厳しい事業環境にもかかわらず、過去最高の四半期の売上高を達成。また、エネルギー貯蔵事業も急成長を続け、過去最高の導入記録を樹立しました。
第2四半期決算はどうだった?
第2四半期の決算では、過去最高の四半期売上高を記録。エネルギー貯蔵事業の急成長と消費者心理の改善による自動車販売台数の回復が大きな要因です。また、他のOEMメーカーが排ガス規制への対応に遅れをとっているため、テスラの*規制クレジット収入も記録的な水準に達しました。
ダイジェスト
- 売上高:255億ドル(前年同期比+2.3%,市場予想:246億ドル)
- 営業利益:16億500万ドル(同▼33%減,予想:18億ドル)
- 当期利益:14.8億ドル(同▼45.3%)
- 1株利益(調整後):0.52ドル(予想:0.60ドル)
- 粗利益率:18%(予想:17.4%)
- FCF(フリー・キャッシュ・フロー):13.4億ドル(予想:19.2億ドル)
- 設備投資:22.7億ドル(予想:25.4億ドル)
売上高は過去最高ですが、利益面では、売上総利益率は18.2%で、過去3年間で最低の水準。
営業利益率は9.6%で、前年同期の14.6%から低下しています。
-粗利率は前年同期比0.2ポイント悪化の18%、営業利益率は3.3ポイント悪化の6.3%。平均販売価格の低下とAI関連費用増加が利益率の低下要因ですが、前四半期比では改善。
-自動車販売収入は、前年同期比10%減の約190億ドル(市場予想194億ドル)。納車台数は5%減少し、平均販売価格の低下が減収要因。
–自動車事業(自動車販売185億ドル+*規制クレジット8.9億ドル+リース4.6億ドル)の
売上高は199億ドル(前年同期比▼6.5%)
自動車販売台数は回復?
自動車販売台数の前四半期比での回復は、消費者心理全般の改善とテスラは説明しています。また、持続的な高金利の影響を相殺するため、Teslaは魅力的な資金調達オプションを開始。さらなる販売増加が期待されています。
テスラは、Model 3(エントリーモデルの電動セダン)とModelY(コンパクトSUV “スポーツ・ユーティリティ・ビークル”)以外にも、
Model S(高性能電動セダン),Model X(高級SUV),Cybertruck(電動トラック),Semi(全電動貨物トラック)といった多様なモデルを提供しています。
- 2024年の納車台数の前年比増加率は2023年の38%増から大きく低下する計画を再確認(次世代EVの新製品投入に注力するため)。
- 第3四半期は第2四半期より生産台数増加を見込んでいます。
エネルギー貯蔵事業の成長は?
エネルギー貯蔵事業は、第2四半期に9.4GWhの導入で過去最高を記録。これにより、セグメント全体の売上高と売上総利益も過去最高となりました。エネルギー貯蔵事業の成長は、Teslaの多角的な事業展開の一環として重要な役割を果たしています。
-エネルギー関連収入は前年同期比2倍の30.1億ドル、サービス等収入は21%増の26.1億ドル、*環境規制クレジット売却収入は3.2倍の8.94億ドル。
テスラの環境規制クレジット
*テスラの規制クレジット事業は、環境規制に準拠するために必要なクレジットを他の自動車メーカーに売却することによって得られる収益を指します。他の自動車メーカーは、自社の車両が環境基準を満たさない場合、規制クレジットを購入することで規制要件を満たすことができます。テスラは、自社のEVがゼロ排出車両であるため、他のメーカーに規制クレジットを提供して収益を上げています。テスラの将来にわたる、強みと言えます。
- *「4680」バッテリーセルの出荷量は前四半期比51%増、サイバートラックの週刊生産能力は1,400台超過(第1四半期は1,000台超)。サイバートラックは年末までに黒字化見込み。
*「4680」バッテリーセルは、新型大容量筒形EV向けに開発された次世代リチウムイオン電池。革新的なドライ電極技術を採用し、従来よりも高いエネルギー密度と性能を実現。電気自動車の性能と航続距離が向上し、持続可能なモビリティへの貢献が期待されています。
- 新製品は低価格の次世代EVを含み、新型モデルは2025年上期、貨物用Semi(セミ)トラックは2025年末までに生産開始計画。次世代プラットフォームでの生産効率向上により、全社生産能力は2023年実績より50%増加を見込んでいます。
- ロボタクシーは10月10日に公開予定。人型ロボットは2025年末までに数千台自社用に生産し、2026年には外販を開始予定。
AIイニシアチブの進展は?
FSD
テスラのAIイニシアチブは、自動車業界に革命をもたらすべく、人工知能(AI)を活用して先進的な自動運転技術や製品を開発・導入する取り組みを指します。
- 完全自動運転(FSD)ソフトウェアは、車両が人間の介入なしに自律的に運転できるように設計。
- 自社製のAIチップ「FSDコンピュータ」を開発し、車両に搭載。
- Dojoは、テスラが開発した専用のスーパーコンピュータで、AIモデルのトレーニングに特化。膨大な量のデータを高速で処理し、自動運転アルゴリズムを学習しています。
–Dojoは「ドウジョウ」と読みます。日本語の「道場」に由来しており、トレーニングや訓練の場所を指します。テスラのDojoスーパーコンピュータは、AIモデルのトレーニングに特化したシステムであり、その名前も「訓練場」を意味するこの言葉にちなんでいます。 - ロボタクシーは、ドライバーなしで乗客を目的地まで運ぶことができる自律走行車両を目指しています。
第2四半期もテスラのAIイニシアチブが進展しました。北米ではFSD(Full Self-Driving)4の価格を引き下げ、必要なハードウェアがあれば誰でも無料で試用できるようにしました。これらのプログラムは成功を収め、より有意義なFSDの収益化に向けた基盤を築きつつあります。
AIを活用した製品・サービスを加速
テスラは引き続き全社的なコスト削減に重点を置きつつ、従来のハードウェアビジネスの成長とAIを活用した製品・サービスの開発を加速させています。また、ロボタクシーの導入時期は技術の進歩と規制当局の承認に左右されますが、その潜在的な価値が非常に大きいため、将来を見込み、精力的に取り組んでいます。
エネルギーとロボティクスのリーダー
エネルギー事業
テスラは、単なる自動車メーカーではなく、エネルギーおよびロボティクスの分野で革新的な企業としても知られています。以下に、テスラのエネルギー事業とロボティクス事業について詳しく紹介します。
テスラは、持続可能なエネルギーの普及を目指して、多岐にわたるエネルギー関連製品とサービスを提供。
- 家庭用蓄電池「Powerwall」: 家庭での電力管理を効率化し、太陽光発電システムと組み合わせて使用することで、電力の自給自足が可能に。
- 産業用蓄電システム「Megapack」: 大規模なエネルギー貯蔵ソリューションであり、電力会社や大規模な産業施設向けに設計。
- 太陽光発電システム: テスラが太陽光パネルやソーラールーフを提供し、再生可能エネルギーの利用を促進。
- 車両充電設備: テスラはスーパーチャージャーネットワークを構築し、電気自動車の充電インフラを整備。
これらの製品とサービスを通じて、テスラは持続可能なエネルギーの普及と利用を推進しています。
ロボティクス事業
テスラは、AIとロボティクスの分野でも先進的な取り組みを行っています。
- Tesla Bot(Optimus): テスラは、二足歩行の人型ロボット、オプティマス「Optimus」を開発。Optimusは、同社の自動運転技術を応用し、高度なAIとセンサー技術を搭載しています。
- AIトレーニングシステム「Dojo」: テスラは、AIトレーニング用の専用チップとシステムを開発し、AIの学習効率を飛躍的に向上させています。
イーロン・マスクは、ロボティクス事業が将来的には自動車事業を上回る収益をもたらす可能性があると予測しています。テスラのロボティクス技術は、自社工場での生産効率向上や、将来的には一般家庭や産業分野での利用が期待されています。
オプティマスとは
テスラが開発している人型ロボットオプティマス(Optimus)は、2021年に初めて発表。自動運転技術で知られるテスラが、汎用的な二足歩行型ロボットを目指して開発しているものです。危険な作業や単純作業を代行することを目的としています。
技術的特徴
Optimusは以下のような特徴を持っています。
- 身長と体重:身長は約173cm、体重は約57kg。
- 運動能力:周辺環境を認識して歩行し、自分の手足を認識して物を掴む、片足でバランスを保つ、道具を使うなどの基本的な動作が可能です。
- 搭載技術:テスラの自動運転車と同じAI技術を搭載し、オートパイロットカメラや完全自動運転用コンピュータを使用しています。
開発と展望
- プロトタイプ:2022年にはプロトタイプ「Bumble C」が公開、2023年にはさらに改良が進められました。
- 量産と販売:2025年には工場での作業が可能になり26年には他の企業向けに販売を開始する予定としています。
注目される理由
Optimusが注目される主な理由は以下の通りです:
- イーロン・マスク氏のネームバリュー:彼の実績と影響力が大きい。
- 量産の目標:量産時期と価格目標が従来の常識を超えている。
- 先進的な技術:電気自動車の技術を応用したハードウェア技術。
- 機械学習の導入:大規模な機械学習システムを導入し、行動を最適化している。
- 開発速度:プロジェクト発足からの成長速度が非常に早い。
今後の課題
現時点では、Optimusの基本能力は実用レベルには達していないものの、短期間で高い水準に達していることは確かです。しかし、同じレベルのプロジェクトは他社でも進行中であり、競争が激化しています。
テスラの人型ロボット「Optimus」は、今後の技術進化と実用化に向けて注目されるプロジェクトです。
About テスラ
- 設立年: 2003年
- 上場年: 2010年
- ティッカーシンボル:TSLA
- セクター:一般消費財(Consumer Discretionary)
- 年間売上高: 968億ドル(2023年通期売上高/12月会計年度)
- 株式時価総額: 6,888億ドル(約106兆円,7/24時点)
- ライバル企業:トヨタ自動車(7023),フォルクスワーゲン,BYD
- 従業員数: 12万7,000人
まとめ
テスラの第2四半期決算は、過去最高の収益を達成し、自動車販売台数の回復など、様々なポジティブな要素が見られましたが、市場予想届かない利益等の結果で、株価は決算発表後大きく下落しています。
しかし、AIイニシアチブやロボタクシーなどの新技術への取り組みも進展しており、将来的な成長への足場作りにも抜かりはありませんし、エネルギー貯蔵事業や環境規制クレジットなど業績サポートが期待される分野も堅調に伸びています。イーロン・マスク氏の先見性とカリスマ性も忘れてはなりません。
好むと好まざるとに関わらず、カーボンニュートラルを目指す世界をリードする、テスラをポートフォリオの一角に加えて置くことは賢い選択だと考えます。
テスラは、エネルギーとロボティクスの分野で革新的な技術を開発し、持続可能な未来を実現するためのリーダー企業です。エネルギー事業では、家庭用から産業用まで幅広いソリューションを提供し、再生可能エネルギーの普及を推進しています。
一方、ロボティクス事業では、AIとロボット技術を駆使して、新たな市場を開拓しています。これらの取り組みにより、テスは単なる自動車メーカーを超えた多角的な企業として成長を続けています。
よくある質問 Q&A
Q: Teslaの第2四半期決算で特に注目すべき点は何ですか?
A: 過去最高の四半期収益を達成し、エネルギー貯蔵事業が急成長を続けた点が特に注目されます。
Q: Model SとModel Xの違いは何ですか?
A: Model Sは高性能セダンで、航続距離と加速性能が優れています。一方、Model XはプレミアムSUVで、広いインテリアと特徴的なファルコンウィングドアを持ち、家族向けに適しています。
Q: Cybertruckはどのような特徴がありますか?
A: Cybertruckは斬新なデザインと耐久性を持ち、最長500マイルの航続距離や高い牽引能力を備えた全電動トラックです。
Q: 新型EVがいつも話題にのぼりますが、それはロードスターのことですか
A: テスラの新型EVに関する話題は、ロードスターを含むものの、それだけではなく複数の新しいモデルの開発と発売を指しています。テスラは高性能スポーツカーから実用的な乗用車まで、幅広い種類の電気自動車を展開する計画を持っています。
Q: テスラ Semiはの販売状況はどのようになっていますか
A: テスラSemiは現在、ペプシコなど一部の企業向けに販売されており、一般企業向けの本格的な販売はまだ開始されていません。ネバダ州に専用の生産施設を建設中で、量産体制が整い次第、より多くの企業に提供される予定です。
コメント