Chat-GPTなどAIの学習向け等に使用される半導体を手がけるエヌビディア。同社の第1四半期決算は、データセンター部門の売上高が予想を上回り、引き続き強気のガイダンス(5-7月期の見通し)が示されました。また、増配と株式分割の発表もあり、投資家からの期待が高まっています。
エヌビディアのAI革命:増配と株式分割で市場を驚かせる
決算のポイント
- 売上高は前年同期比3.6倍の260.4億ドル
- データセンターの売上構成比が87%の226億ドル。約40%がアマゾン等大規模クラウドが占める
- 増配と株式分割を発表
- 「次の産業革命」のリーダーを目指す
2024/2-4月期 | 2023/2-4月期 | 前年同期比 | |
売上高 | 26,044 | 7,192 | 3.62倍 |
営業利益 | 16,909 | 2,140 | 7.9倍 |
当期利益 | 14,881 | 2,043 | 7.3倍 |
EPS(調整後) | 6.12 | 1.09 | 5.6倍 |
ダイジェスト
- 売上高-前年同期比3.6倍の260.4億ドル(市場予想 247億ドル)
- 1株利益-前年同期比5.6倍の6.12ドル(予想 5.65ドル)
- データセンター-226億ドル(予想 211億ドル)/ゲーム-26億ドル/プロフェッショナル・ビジュアル-4.27億ドル/自動車-3.29億ドル
- 粗利益率-79%(予想 77%)
- データセンター売上の約40%がアマゾン、メタ、マイクロソフト、アルファベットの4社が占める
- 次期5-7月期,Q2の見通し(ガイダンス)も市場予想を上回る、売上高280億ドル±2%、粗利益率は75~76%
- 増配(0.04ドル→0.1ドル)と株式分割(1株→10株)を発表
*円グラフにカーソルを各部門の売上高がわかります。単位百万ドル
増配と株式分割の発表
エヌビディアは四半期配当を1株0.04ドルから0.10ドルに150%増配すると発表。また、1株を10株に分割することを決定し、これにより投資家の期待がさらに高まっています。
株価の動き
*株価は、各月末の終値です。5/23はその日の終値。チャートにカーソルを合わせると株価が確認できます。単位ドル
2024年に入ってからは、株価は倍以上に。(495.22ドル→1,037.99ドル5/23時点)そして時価総額は、マイクロソフト(3.1兆ドル)、アップル(2.8兆ドル)に次ぐ、2.5兆ドル(約392兆円)までにエヌビディアは成長しています。
トップのコメント
“AIコンピューティングへの投資は引き続き旺盛。『次の産業革命が始まった。』AIはほぼすべての産業に大幅な生産性向上をもたらし、企業のコストとエネルギー効率を高めると同時に収益機会を拡大する。”
-ジェンセン・フアンCEO Financial Results for First Quarter Fiscal 2025より
注目の新チップ「ブラックウェル」
エヌビディアの新チップ「ブラックウェル」は、H100に比べて訓練速度が最大4倍、推論速度が最大30倍となる次世代のGPUアーキテクチャ。その特徴は
- 高性能処理能力:ブラックウェルは、最新のAIと機械学習タスクに対応するために設計された高性能なチップ。何兆ものパラメーターを扱う生成AIの基礎を築くために開発されています。
- フル生産体制:現在、ブラックウェルはフル生産体制に入っており、需要の増加に迅速に対応可能。
- 大規模パラメータ処理:ブラックウェルは、特に生成AIにおいて重要な役割を果たし、大規模なデータセットと複雑な計算を効率的に処理する能力があります。
- 次世代産業革命:ジェンセン・フアンCEOはブラックウェルを次の産業革命の鍵と位置づけており、さまざまな産業における生産性向上とコスト削減、エネルギー効率の向上に寄与することを期待しています。
- TSMCとの協力:製造はエヌビディア自身では行わず、台湾のTSMCに委託。この協力により、最先端の製造プロセスを利用して高品質なチップを生産しています。
ブラックウェルは現代の高度なコンピューティングニーズを満たすための革新的なソリューションであり、生成AIの基礎を築く重要な技術。エヌビディアの今後の成長を支える重要な要素となることに疑問の余地はありません。
TSMCとの関係
TSMCについての深掘りと、『半導体と微細化』について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考に→半導体と微細化:小さなトランジスタがもたらす大きな変化
エヌビディアの豊富なラインナップ
ブラックウェル以外にもある強み
- H200のサンプル出荷を開始(AIの推論パフォーマンスが現在のH100の約2倍)。
- CPUのグレースとGPUを組み合わせたGrace Hopper Superchipの量産出荷を開始。
CUDAとは・・
NVIDIAの強みのもう一つは、「CUDA」と呼ばれるソフトウェアにあります。CUDA(Compute Unified Device Architectureエヌビディアが開発した並列コンピューティングプラットフォームおよびプログラミングモデル)。
CUDAは、GPUを効率的に活用するためのソフトウェアで、WindowsのようなOS(オペレーティングシステム)に例えられることもあります。このソフトウェアは、GPUを効果的かつ使いやすく操作できるようにするもので、ほとんどのAIシステムやアプリケーションで活用されています。
WindowsやiPhoneのシステムに慣れると、他のシステムに移行するのが面倒だと思う経験は誰しもあると思いますがCUDAはまさに、GPUをスムーズに動かすための、「事実上の標準」。
NVIDIAのGPUを中心にした製品は、半導体の性能だけでなく、ソフトウェアの使い勝手の良さも兼ね備えており、これがライバル企業が簡単に追随できない強みとなっています。CUDAの特徴は
- 並列処理能力の強化:CUDAは、エヌビディアのGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)を利用して、大量のデータを並列処理することができます。これにより、従来のCPUでは難しかった高性能計算が可能になります。
- プログラミングの簡素化:CUDAはC言語を基にした拡張プログラミング言語を提供しており、開発者は従来のC言語の知識を活かしてGPUプログラミングを行うことができます。また、PythonやFortranなどの他のプログラミング言語とも互換性があります。
- 幅広い適用範囲:科学技術計算、機械学習、データ解析、物理シミュレーション、画像処理など、多岐にわたる分野で使用されています。特にディープラーニングの分野では、GPUを活用することで学習速度が飛躍的に向上します。
- 大規模な開発者コミュニティ:CUDAはエヌビディアの主要な技術の一つであり、世界中に大規模な開発者コミュニティが存在します。このコミュニティからのサポートやリソースが豊富で、新しい技術や改善が頻繁に共有されています。
- 高い互換性:CUDAはエヌビディアのすべてのGPUに対応しており、開発されたプログラムは幅広いエヌビディア製品で動作します。これにより、ハードウェアの進化に伴ってもソフトウェアの互換性が維持されます。
CUDAは、エヌビディアのGPUの性能を最大限に引き出し、様々な分野での計算ニーズに応える強力なツールとして広く利用されています。
重要性を増す、米国データセンター
データセンターの世界的なハブ
米国はデータセンターの世界的なハブとして重要な役割を果たしています。この背景にはいくつかの要因があります。まず、急速なデジタル化の進展に伴い、企業や個人のデータ利用が爆発的に増加していることが挙げられます。また、
クラウドコンピューティングの普及により、*オンプレミスからクラウドへの移行が加速しており、これがデータセンターの需要をさらに押し上げています。ビッグデータの需要増加も重要な要素であり大量のデータを迅速かつ効率的に
処理するためには、高性能なデータセンターが必要です。さらに、米国はインフラの整備が進んでおり、電力供給の安定性やネットワークの高速化がデータセンター運営において重要な利点となっています。これらの要因が相まって、米国はデータセンター産業の中心地として成長を続けています。
*オンプレミスとは、自分たちの会社や学校などの建物の中に、コンピュータやサーバーを設置して使うことを指します。たとえば、学校のコンピュータ室にあるサーバーがオンプレミスです。これに対して、クラウドはインターネットを通じて遠くの場所にあるコンピュータやサーバーを利用する方法です。
パブリッククラウド事業と設備投資の動向
大規模データセンターを所有する主な米企業は、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)、メタ・プラットフォームズ(META)ですが、エヌビディアのデータセンター売上のおよ
そ40%をこの4社が占めます。4社のクラウド事業やAIに関する今後の設備投資がエヌビディアの成長の鍵を握っていると言っても過言ではありません。
パブリッククラウド事業の増収率が改善
4社のうち、メタを除く3社の1-3月のパブリッククラウド事業の増収率(前年同期比)は、10-12月から改善。
AI向けを中心に設備投資が加速
- 物流投資を重視してきたアマゾンを除く3社の1-3月の設備投資額合計(前年同期比)は、10-12月から向上。
- Bloombergの市場予測では、4-6月にさらに成長が加速する見込み。
- メタはAI開発のためのインフラ投資を目的として、24年通期の設備投資計画を300億-370億ドルから350億-400億ドルに引き上げ。
- アルファベットは年内の各四半期の設備投資額がQ1と同等かそれ以上になると予想。
- マイクロソフトは25/6期の設備投資額が24/6期を上回る見込み。
エヌビディアのライバル
データセンター投資に関連する企業にはエヌビディア(NVDA)以外にもインテル(INTC)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などがいますが、データセンターのシステムも従来のCPU中心から、GPUを中心とするAIサ
ーバーに移行中であり、エヌビディアの圧倒的な優位性は続きます。エヌビディアのデータセンター向け売上高は、インテルやAMDのそれを大きく上回る成長を示しています。
まとめ
データセンター向けの売上の約40%を占めるアマゾン等の大規模クラウド事業者以外の顧客でも、前四半期同様好調でしばらく、エヌビディアの圧倒的優位性を続くことが予想されます。
- 売上高は前年同期比3.6倍の260.4億ドル
- データセンターの売上構成比が87%の226億ドル。約40%がアマゾン等大規模クラウドが占める
- 増配と株式分割を発表
- 「次の産業革命」のリーダーを目指す
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