AI関連株の影響と市場反応:【5月28日-31日】の米国株式市場分析。インフレ懸念後退?とPCE物価指数の影響は・・
5月最終週の米国株市場は波乱の展開。NYダウは3日続落したものの、最終日には大きく反発し、市場全体が活気を取り戻しました。インフレ指標や長期金利の動向が投資家にどのような影響を与えたのか、サクッと見ていきましょう。
目次
長期金利と主要3指数の動き:5月最終週の米国市場動向
週末のマーケット
1週間のダイジェスト
*日付をクリックすると、その日のマーケットの様子がわかります。
火曜日
- NYダウは反落し(0.55%)安の3万8,852ドルで週をスタート。これは3週間ぶりの安値。
- 米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始時期が後にずれるとの見方。
- 米債券市場で長期金利が上昇(債券価格は下落)したことも株式相場の重荷に。
- FRBの利下げに関する見解
-ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、FRBの利下げが適切になるには「さらに多くの月にわたる(インフレ化を示す)明るい指標」が必要だと発言。
-インフレ率が下がらなければ、利上げする可能性についても言及。
- 消費者信頼感指数とインフレの懸念
-5月の米消費者信頼感指数は102.0で、予想の96.0を上回り、4月改定値の97.5から改善。
-1年後の予想インフレ率も小幅に上昇。
-米景気の底堅さを示し、インフレ沈静化に時間がかかるとの懸念から株に売り。
- 米債券市場の動向
-長期金利が前週末終値(4.46%)を上回り、4.5%台まで上昇。
-消費者信頼感指数の改善と、2年物と5年物の国債入札での需要の弱さが、債券利回りに上昇圧力。
-金利上昇により、株式の相対的な割高感が強まる。
- 個別銘柄の動向
- エヌビディア(NVDA)が大幅高となり、業績拡大に期待。
- 半導体株の上昇が目立ち、アルファベット(GOOGL)やメタブラットフォームズ(META)も上昇。
- アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)やマクロン・テクノロジー(MU)も↑。
- 原油先物相場の上昇を受け、シェブロン(CVX)が買われる。
- ナスダック総合株価指数は(0.58%)高の1万7019.880で終了。2営業日連続で史上最高値を更新。
水曜日
- ダウ平均は朝に440ドル程度まで下げ幅を広げ、その後やや下げ渋る展開。
- 米連邦準備理事会(FRB)の利下げ時期が後にずれるとの見方。
- 米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識されたことから売り。
- 米債券市場の動向
-長期金利が一時4.63%に上昇し、5月上旬以来の高水準に。
-FRB高官から利下げに慎重な発言が相次ぎ、国債入札の低調な結果が金利高へ。
-金利上昇への警戒感が高まっていると指摘。
- 国際的な金利動向
-独5月消費者物価指数(CPI)速報値が前年同月比で上昇し、独長期金利が約半年ぶりの高水準を記録
-日本の長期金利も上昇基調を強める。
-海外金利の上昇が米国債の売りに波及し、米株相場の重荷に。
- エヌビディアが上昇に転じ、投資家心理を支える。
- ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)が下落、低所得者向け保険事業の先行きに慎重な見方示す。
- ナスダック総合株価指数は3営業日ぶりに反落、(0.58%)安の1万6920,580。
木曜日
- セールスフォースの影響
-セールスフォースが19.7%安に。セールスフォース(CRM)の急落が指数を押し下げ。
-’24年2~4月期の決算で売上高が市場予想に届かず、5~7月期の業績見通しも市場予想を下回る。
-「人工知能(AI)関連の追い風による業績期待が高まっていたため、売りが広がった」との見方。
-ソフトウエア関連を中心にハイテク銘柄にも売りが波及し、マイクロソフトが3.3%下げた。
- GDPと経済指標の発表
-1-3月期の米実質国内総生産(GDP)改定値は前期比年率で1.3%増と速報値(1.6%増)から下方修正
-個人消費の伸び率が引き下げられ、年後半の景気減速懸念が浮上。
-米個人消費支出(PCE)物価指数のコア指数の伸びは前期比3.6%と速報値(3.7%)を下回りFRBの利下げ開始を後押しする見方も。
- ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)ハネウェル・インターナショナル(HON)ナイキ(NKE)が上昇。
- アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)やクアルコム(QCOM)などが売られる。
金曜日
- NYダウは反発、 574ドル84セント(1.50%)高。4営業日ぶりの反発。1日の上げ幅としては2023年6月以来の大きさ。
- 前日に急落したセールスフォースなどの影響で、AI関連のハイテク株に売り圧力。
- ナスダック総合株価指数の小幅続落、週間では6週ぶりに下落。
- 4月米個人消費支出(PCE)物価指数
-市場の予想通りの結果となり、高インフレへの懸念が和らぐ。
-4月米PCEコアデフレーター
-前年比-2.8%(予想 2.8%,3月2.8%)
-前月比-0.2%(予想 0.3%,3月0.3%)
-長期金利が4.50%前後まで低下し、株式の割高感が薄れ、主力株への買いが増加。
「市場では今年ずっと物価高が心配されていたため、結果を受けて安堵感が広がった」と市場関係者。
-長期金利の低下: 米債券市場で長期金利が4.54%から4.50%前後に低下。
-主力株への買い: 株式の相対的な割高感が薄れたため、主力株に買いが入る。
まとめ
AI関連、半導体、ハイテク株の活躍(好材料)と利下げ先延ばし(悪材料)の引っ張りあいのような、マーケットでした。5月を振り返りますと、月間では、NYダウが2.3%、S&P500が4.80%、ナスダックが6.88%の上昇率。さらに、3指数が揃って史上最高値を更新したのが5月。
“Sell in May,5月に株を売れ”の経験則(アノマリー)は、6月以降のマーケットに委ねられます。
まとめ
- FRB要人からは利下げに慎重な発言。
- 30日のセールスフォースの四半期決算は期待はずれ。AI関連の追い風に乗れず、他のハイテクにも売り
- 週末の4月米国PCEは予想通りで高インフレの懸念やわらぐ?
- 主要株価3指数では、NYダウの4万ドル台(5/20)、S&P500の5,300ポイント台(5/23)に続いて、ナスダック総合指数が、17,000ポイント越えの史上最高値を5/28に更新。
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