好調だった1-3月決算シーズンを終えた今、投資家にとって重要なのは
「関税」でも「減税」でもなく、“本当にマーケットを動かしているもの”を見極めることかもしれません。
言いたい放題の大統領?の裏で進む、マーケット環境の変化をお伝えします。
目次
今週の見通しと重要スケジュール【6/2-6/6】
今週の見通し
5月28日、米国際貿易裁判所は第2次トランプ政権下で導入された関税の
一部を違法と判断し、差し止めを命じました。対象は国際緊急経済権限法に
基づく対カナダ、メキシコ、中国の関税で、不備が指摘されました。
関税強化が後退、リスクが和らぐとの理由で、一時的に株式市場は好感したものの
トランプ政権が即日控訴し、連邦巡回控訴裁が差し止め命令の一時停止を決定。
また、相互関税の一部はすでに延期され、鉄鋼など個別品目への課税も
対象外とされているため、市場への影響は限定的とみられ、29日の
米株式市場の反発は、期待はずれ?となりました。
むしろ市場関係者が今、懸念しているのは、トランプ政権の目玉として注目されて
いる減税(いわゆるトランプ減税の延長やチップ収入や残業代への課税免除などを新たに加えた
税制法案は米下院で可決)が、財政支出→財政悪化につながるのではと、債券売りに
つながり、金利の高止まりをもたらしていることです。
また、米国からの関税強化に対してだけでなく、欧州をはじめ各国では
インフラ投資や国防費など、積極的な財政支出を行うタイミングにあり
これもまた各国の長期・超長期金利を上昇させる要因になっています。
金利の上昇は、企業活動を抑え、企業業績先行きの懸念材料として、
株価の割高感を強めることになり、株式市場の重荷となります。
米国では、企業の1-3月期(主に)決算発表が出揃い、全体としては
第1四半期決算は予想を上回る内容の企業が多くありました。ただ、次期4-6月以降については、
関税による不透明感等の影響で慎重な見通しが相次ぎ、株式の割高感を浮き彫りに
させる可能性があると指摘する、一部アナリストがいました。
いずれにしても、米国政府による関税の落とし所がはっきりするまでは、
トランプ大統領の発言、お言葉に?振り回されるマーケット環境が、続くと思われます。
今週の重要スケジュール
6月
2日(月)・・5月ISM製造業景況指数
3日(火)・・4月求人労働異動調査(JOLTS)
4日(水)・・ベージュブック(地区連銀経済報告書)発表
5月ISM非製造業景況指数
5日(木)・・4月米国貿易収支
6日(金)・・5月雇用統計(非農業部門雇用者数/失業率)
先週のマーケットレビュー【5/26-30】
30日週末金曜日のマーケット
先週のおさらい
- 米政府、EUへの追加関税を7月9日まで延期発表。貿易摩擦への懸念が後退。
- 経済指標の景況感に明るさ。インフレにも落ち着き。
- エヌビディアの決算は増収・増益。AI需要の強さを強調
- 週末は、トランプ大統領発言で、対立強化と対話期待が交錯、判断分かれる展開
ダイジェスト
*日付をクリックすると、その日マーケットの様子がわかります。
月曜日
メモリアル・デー(戦没者追悼記念日)の祝日のため、米国市場は休場でした。
火曜日
エヌビディア<NVDA+3.21%,135.50ドル>
テスラ<TSLA+6.94%,362.89ドル>
・NYダウ+1.78%
・S&P500+2.05%
・ナスダック+2.47%
・長期金利(10年国債利回り)4.44%
*株価、指数等は終値。(+↑上昇)(▼↓下落)は前日比です。
●NYダウは5営業日ぶりに反発。
●トランプ大統領
EUへの追加関税を7月9日まで延期すると発表。貿易摩擦への懸念が後退。
●米・EU間の貿易協議進展への期待
ハイテクや消費関連株に買いが入る。
●5月米消費者信頼感指数
:98.0<前月から12.3ポイント上昇。市場予想(86.0)>を上回る。6カ月ぶりの改善。米中間の関税引き下げ合意が景況感改善につながったのではとの見方。
●エヌビディア(上記)
中国向け新AI半導体発売計画を材料視。28日には四半期決算(2-4月)を予定。「好業績を見込んだ先回り買い」との一部市場関係者の声。
●テスラ(上記)
マスクCEOの経営注力姿勢を受け上昇?
●アップル<AAPL+2.53%,200.21ドル>
9営業日ぶりに反発。
水曜日
エヌビディア<NVDA▼0.51%,134.81ドル>
テスラ<TSLA▼1.65%,356.90ドル>
・NYダウ▼0.58%
・S&P500▼0.56%
・ナスダック▼0.51%
・長期金利(10年国債利回り)4.48%
*株価、指数等は終値。(+↑上昇)(▼↓下落)は前日比です。
●エヌビディア決算発表前
エヌビディアのAI向け半導体需要や対中輸出規制に注目集まる。投資家はAI投資の持続性を見極めようと様子見。主力株に持ち高調整の売りも。
●FOMC(5/6-7開催分)議事要旨
経済の不確実性拡大、政策判断は慎重姿勢。利下げ期待が後退?相場の重しに。
●取引終了後エヌビディア決算発表
ファンCEO『・・各国政府はAIを電力やインターネットと同様に不可欠な基幹インフラと認識しており、エヌビディアはその中心にいる』。
発表後の時間外取引(日本時間7時頃)4%以上上昇。
2-4月期の決算は以下の通り
・売上高:441億ドル(予想433億ドル)
・EPS:0.81ドル(予想0.93ドル)
木曜日
エヌビディア<NVDA+3.25%,139.19ドル>
テスラ<TSLA+0.43%,358.43ドル>
・NYダウ+0.28%
・S&P500+0.40%
・ナスダック+0.39%
・長期金利(10年国債利回り)4.42%
*株価、指数等は終値。(+↑上昇)(▼↓下落)は前日比です。
●エヌビディア(上記)<決算2-4月,第1四半期>
増収増益。相場を下支えし、株価は3%超上昇。対中輸出規制の影響で見通しは予想未達も、AI需要の強さを評価。半導体関連堅調。
●トランプ政権
トランプ関税が違憲だとして米国内の中小企業などが起こした訴訟で、米国際貿易裁判所は28日に米国政府に関税差し止めを命じ、リスク後退との見方。一方で、
-代替手段による関税発動への懸念から不透明感も強まり、方向感に欠ける展開。
●米長期金利が低下
株式の割高感が緩和も、戻り局面での高値警戒感や過熱感が重荷に。
エヌビディア<NVDA▼2.92%,135.13ドル>
テスラ<TSLA▼3.34%,346.46ドル>
・NYダウ+0.13%
・S&P500▼0.01%
・ナスダック▼0.32%
・長期金利(10年国債利回り)4.40%
*株価、指数等は終値。(+↑上昇)(▼↓下落)は前日比です。
●米中貿易摩擦への懸念
NYダウは、一時300ドル超下げる場面もインフレ懸念の後退で主力株に買い。月末調整の動き・・
●4月PCEコアデフレーター
-前年比2..5%(予想2..5%,3月2.7%)。
-前月比0.1%(予想0.1%,3月0.1%)
●5月米消費者態度指数(確報値)
-52.2(速報値・予想を上回る)
-1年先・長期のインフレ期待も速報値から下方修正され、「米経済は底堅く、インフレ懸念も和らいだ」の見方あり。
●トランプ大統領
-中国との貿易合意破棄をSNSで非難。29日には米財務長官が交渉の停滞に言及。米中対立の再燃懸念が市場の重しに。一方で
-トランプ氏は記者会見で「習近平主席と会談の見通し」と発言し、緊張緩和期待。
●米連邦巡回区控訴裁判所
関税差し止め命令を一時停止も、関税再導入への懸念は残る
●エヌビディア、テスラ(上記)
米中対立の再燃、不安視する動き・・
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