1-3月/Q1,2024決算は、市場予想を上回りました。特に広告事業とクラウド部門の収益が顕著に
増加し、その成長の勢いが同社の業績を大きく押し上げています。アルファベットのルース・ポラ
ットCIO( 社長兼最高投資責任者)は「第1四半期の好業績は、全社的な収益の力強さと、コスト基
盤の再構築に向けた継続的な取り組みを反映したもの」と述べています。
安定の広告収入とクラウド部門の成長
決算のポイント
概要
- 売上高-前年同月比+15%増の805.4億ドル、営業利益率は拡大。
- 営業利益-255億ドル
- EPS(1株利益)-1.89ドル
- 広告収入-617億ドルのうちYouTube ads(ユーチューブ広告)は 80.9億ドル(広告収入の13%)
- Google Cloud(クラウド)-96億ドル(全体の売上のおよそ12%)
2024/1-3月(Q1) | 2023/1-3月(Q1) | 前年同期比 | |
売上高 | 80,539 | 69,787 | +15.4% |
営業利益 | 25,472 | 17,415 | +46.3% |
当期利益 | 23,662 | 15,051 | +57.2% |
EPS | 1.89 | 1.17 | +61.5% |
株価の動き
今年に入ってからも、株価は右肩あがり。4/25の決算発表後も上昇基調にあります。生成AIの分野で先行するOpenAIとマイクロソフト連合を追撃する準備が整いつつあることを投資家は期待しているのかもしれません。
*株価は各月末の終値(5/10のその日の終値)。チャートにカーソルを合わせると株価がわかります。単位ドル
決算ダイジェスト
トップのコメント
-スンダル・ピチャイCEO
“第1四半期の業績は、検索、YouTube、クラウドの好調を反映しています。ジェミニ時代は順調に進んでおり、全社的に大きな勢いがあります。AI研究とインフラストラクチャーにおける当社のリーダーシップと、グローバルな製品展開により、当社はAIイノベーションの次の波に対して有利な立場にあります。”
広告事業の拡大
2024年第1四半期におけるアルファベットの売上高は、前年同期比で顕著な成長を遂げ、その成果は特に広告事業の拡大によって支えられています。中核となる広告事業の収入は13%増加し、前四半期の11%増に比べても加速していることが明らかになりました。
この成長の大きな要因の一つとして、検索広告のパフォーマンスが挙げられます。特にアジア太平洋地域の小売業者がデジタルマーケティングへの投資を活発化させており、この地域からの広告支出は前年同期比で14%の増加と加速しています。
また、YouTube広告においても顕著な成長が見られ、ダイレクトレスポンス広告とブランド広告の両方で強いパフォーマンスを示しています。
YouTube広告の成長率は21%と非常に高く、デジタル広告市場におけるアルファベットの地位をさらに強固なものとしています。これらの結果から、アルファベットはデジタル広告の分野で更なる市場シェアを獲得し続けることが期待され、今後も持続的な成長が見込まれています。
グーグルクラウドの躍進
グーグルクラウド部門は28%の増収でこちらも加速、営業利益は前年同月比4.7倍の9億ドル。これは市場予想の6.7億ドルを大幅に上回るものです。クラウドインフラへの強い需要と、AIを活用した企業向けオフィスソフWorkspaceの成長が寄与。アルファベットはクラウドサービス全般における成長の背景にAIの効果を提供できていることが大きな要因としています。
配当と自社株買い、財務戦略の新展開
初めての四半期配当を発表し、1株当たり0.20ドルを6月に実施予定。これに加えて、700億ドルの自社株買い計画もおおやけされています。これら株主還元策は投資家に対し、さらなるグーグルの魅力をもたらす可能性があります。
1-3月期決算発表より
アルファベットの取締役会は本日、現金配当プログラムの開始を承認し、2024年6月10日現在の株主名簿に記録されたA種、B種およびC種の各株式に対し、1株当たり0.20ドルの現金配当を2024年6月17日に支払うことを宣言しました。同社は今後も四半期ごとに現金配当を行う予定であるが、取締役会の独自の裁量による検討と承認が必要となる。
自己株式の取得
アルファベットの取締役会は本日、クラスAおよびクラスC株式の相対的な取引価格や取引量など、経済的コストや市場の実勢を考慮し、当社および株主にとって最善と考えられる方法で、AおよびC株式を700億ドルを上限に買い戻すことを承認しました。
アルファベットを親会社とするグーグル株は、GOOGLとGOOGという2つのティッカーシンボルで上場しています。違いは『議決権』。議決権がある方が、GOOGLでクラスA、ないほうがGOOGのクラスCになります。両者の株価はほぼ同じ株価になるように動きます。
アルファベット、グーグルの収益構造
Googleは、Googleサービス、Googleクラウド、その他ベットとしてセグメント業績を報告していますが、それぞれの収益の源は以下のようになっています。(*広告収入(Google advertising)は、全体の805億ドルうち、617億ドルほど
になります。)
- Google Services-広告、Android、Chrome、デバイス、Googleマップ、Google Play、検索、YouTubeなどの製品およびサービスが含まれます。そして主に広告、YouTube TV、YouTube Music and Premium、NFL Sunday Ticket、Google One などの消費者向けサブスクリプション型製品の利用料、アプリやアプリ内課金、端末の販売から収益を生み出しています。704億ドル(下記円グラフの1+2+3+デバイスとサブスク等の合計)
- Google Cloud-インフラストラクチャーやグーグル・クラウド・プラットフォーム・サービス、グーグル・ワークスペース・コミュニケーション・コラボレーション・ツール、その他の企業向けサービスの利用料とサブスクリプションから収益を生み出しています。96億ドル
- Other Bets(その他事業)-主にヘルスケア関連サービスおよびインターネットサービスの販売から生じる収益5億ドル
アルファベット、Googleの第4四半期決算のサプライズ: 広告収入は予測未達もクラウドが大幅増益。10-12月期/Q4,2023←不気味な存在のOther Betsについて詳しく書いた記事はこちら
セグメント(事業)別売上高
*それぞれの円グラフに合わせると、売上高がわかります。単位百万ドル
今後の展望
アルファベットはさらなる積極的なインフラ投資を行いながら、営業費用を抑制することで、通年の営業利益率改善を目指すとしています。この戦略は、長期的な成長への投資と効率的な資本配分を示しており、将来の業績向上への自信の表れと言えるでしょう。また、
1-3月期の業績は、多くのセクターにおいて堅実な成長を続けており、特にデジタル広告とクラウドコンピューティングの分野でのリーダーシップを確固たるものにしています。決算の結果は、アルファベットのテクノロジー業界におけるその競争力と革新の持続可能性を再び証明していると思います。
まとめ
- 売上高は805.4億ドル、うち広告事業は前年同月比+13%増の617億(およそ全体の77%)ドル
- 広告収入のうち、メインの検索(アジア太平洋地域からの小売り関連が堅調)が同+14%増
- YouTube広告が同+21%増
- クラウド部門(グーグルクラウド)同+28%増
- 初めての四半期配当0.20ドル(6月実施)と700億ドルの自社株買い計画も発表
グーグルがはじめて配当を出し、自社株買いをするいわゆる株主還元策は、ビッグテックの最近の
傾向になっています。短期的にも長期的にも株価にとっては、ポジティブに働きますがハイテク株
としては転換期を迎える段階に来ている証だとも言えます。アルファベットをはじめとするビッグ
テックがここから先も成長していくためには、AIが鍵となると考えているのは当然のことかもしれま
せん。
コメント