昔、証券会社にいるときに、相場が非常にうまい先輩がいました。その先輩いわく、
『お上(おかみ)に逆らってはいけない』
米国株式市場でいうところの、米国中央銀行、FRBがそのお上になります。株式市場は、常に水の流れのように、マネーが動いていますが、その水が流れ出てくる蛇口を閉めたり開いたり(金利)、量(債券購入等)をコントロールしているのがまさにFRBです。
インフレを心配しているFRB
「インフレは一時的なもの」としていたFRBでしたが、少しずつインフレに対するを見方を変えています。
テーパリングのペースを加速せよ
金融政策を決める最高意思決定期間はFOMC(連邦公開市場委員会 Federal Open Market Committee)通常はおよそ6週間ごとに年8回開かれます。失業率やインフレ率、賃金上昇率などの景気指標をもとに経済情勢を議論。短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標の引き上げペースが注目されています。
11月の2日、3日のFOMCでは、テーパリング(段階的縮小)を開始すると発表していましたが、先週24日に公表された議事要旨では、FRB内でインフレが進んでいくことへの不安が定着している様子がうかがえます。それは、高インフレが続いた場合
- テーパリング、債券買い入れプログラムの縮小のペースを加速させ
- より迅速に利上げを実施することに前向き
な姿勢を見せていた複数のFOMC参加メンバーがいたことがわかったからです。実際にFOMCが行われた、11/2-3日から、11/24日の議事要旨の公表があったまでの市場の反応ですが・・・
市場は冷静に評価?
- 株式市場主要3指数は、NYダウが11/8に(36,565ドル)/S&P500(4,743)とナスダック(16,212)は11/22にそれぞれ過去最高値を更新
- ドル/円は、ドル高・円安が進み、11/24には、1ドル=115円台半ばまで
- 米2年国債、10年国債とも売られ、利回りが上昇(11/24)。
と事前の予想通りの展開と好感したような動きでしたが、パウエルFRB議長の続投が決まったあたりから少しずつ雲行きが怪しく?・・・
パウエル議長は続投へ
新型コロナウィルスへの迅速な対応を評価
バイデン大統領は、22日パウエル議長を続投させる方針を固めました。この後は上院で承認を受けて正式に決定となります。任期は2026年2月まで。
「パウエル議長の新型コロナウイルス危機に迅速に対応した手腕を評価し、インフレが高止まりする中、金融政策の継続を重視した決定では」
「ハト派と見なされ金融規制の強化に積極的で民主党左派の支持が高かった、もう一人の候補、ブレイナード理事よりも、1.75兆ドル規模の財政支出法案成立に向けて中道派の支持を得たいとの思惑からの人選だ」
と続投の理由が市場関係者から聞かれています。なお、バイデン大統領は次期FRB議長の有力候補だったブレイナード理事を副議長に決定しています。
変動幅が大きくなって
過去最高値の水準にあることを考えると、一旦利益の確定をする動きが出てもおかしくないですし、長期的にみて後から振り返った時に、そう言えば、そんなこともあったな程度の問題かもしれませんが、「お上」の意向とマーケットの反応を理解しておくと、今後も続くであろう、資産運用、投資への動揺も低く抑えられるかもしれませんので、記録しておきます。
パウエル議長の続投が伝えられた22日を境に、24日議事要旨の公表、25日には、南アフリカで変異型「オミクロン型」が確認、米国ではThanksgiving Dayを挟み、ボラティリティー(変動する幅、変化の度合い)、ブレ幅が下に大きくなる展開となっています。
※前の前の議長の本です。↑デフレが良くないことがわかります。
パウエル議長の本音?
パウエル議長が「”毎月の資産購入を予定よりも早く終了させることを検討する”ことを適切である」と上院の公聴会で語ったことが伝わり、30日の米国株式市場は大幅に下落しています。NYダウは11/8高値から、11/30の終値まで▼6.04%、S&P500は11/22→11/30 ▼3.87%、ナスダックは同期間で▼4.34%となっています。
続投が決まり、安心してついうっかり本音を話してしまったのか、それとも意図的に流し、マーケットの反応を見ようとしたのか、わかりませんが議長の発言が与える影響の大きさに、今更ながらに驚いています。いずれにしても、神経質な年末を迎えそうな気配です。
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