少し前までは、『良いニュースは悪いニュース』と、経済の強さを表す、経済指標が出るとインフレへの警戒からFRBが金利を引き上げるのではないかと、株式市場にはネガティブに働くことが多かったのですが、
最近では「FRBがここまで一気に金利を引き上げても、経済、景気はしっかりしている」と評価し、金利の引き上げのマイナスの影響が出るかもしれないので、「引き上げは終了し、引き下げをしなければならないタイミングが来る」と期待する声が増えています。
12/4-8の米国マーケットの動き
指標の動き
指標 | 12/8 | 12/1 | 騰落率 |
NYダウ | 36,247.87 | 36,245.50 | +0.01% |
S&P500 | 4,604.37 | 4,594.63 | +0.21% |
ナスダック | 14,403.97 | 14,305.03 | +0.69% |
ドル/円 | 144.88 | 146.81 | |
米国10年国債利回り(%) | 4.23 | 4.20 |
1週間のポイント
- 利上げ終了から利下げ時期を模索する?マーケット
- 長期金利(10年国債の利回り)は、一時4.1%台半ばと、約3か月ぶりの水準へ
- 11月雇用統計は多少強めも(インフレ警戒)、消費者マインドの強さから株価は上昇
1週間の様子
4日 MON
週明けの月曜日は、ダウ平均が10月末から前週末にかけ、3,200ドルほど短期間で大きく上昇してことから、利益確定の売りが優先され、主要3指数は反落してスタート。ただ、売り一巡後に下げ渋りを見せ、利上げ局面の終了を意識したマーケットの動きとなっていました。
暗号資産(仮想通貨)を代表するビットコインの現物のETFが米国で承認されるとの思惑を背景に価格が上昇(2022年4月以来)していたことも株式市場にはプラスに働いていたようです。
5日 TUE
ダウとS&P500は、続落、ナスダック総合指数は反発。この日発表された、雇用動態調査でも、労働市場の過熱感の緩和が示されていました。FRBによる利上げ局面終了や2024年前半の利下げ転換への観測の高まりが、米株式市場全体に浸透している現状では、それを確信する上でも、8日発表の11月の雇用統計は気になるところ。
長期金利の指標である10年国債の利回りは、一時4.1%台半ばとおよそ3か月ぶりの水準まで低下。金利の低下により相対的に割高感のある、ハイテク株(PERが高い)などの上昇をサポート。個別企業では、
アップルが(AAPL)前日比+2%上昇し、再び時価総額を3兆ドル台を回復。
6日 WED
ダウは年初来の高値を上回る場面がありましたが、小幅に下げ、3日続落。雇用関係の数字からは、単位労働コストの低下が確認されていましたが、大御所の8日の11月雇用統計を見極めたいとの投資家が引き続き、買いを手控え。
7日 THU
ダウは4営業ぶりに反発。続落によって、短期的な相場の過熱感が薄れていたとも言えます。ナスダックも主力ハイテク株を中心に見直し買いが入り上昇、4か月ぶりの高値となりました。
個別企業では、Googleのアルファベットが6日、生成人工知能(AI)関連の新技術を発表し、一部アナリストが高く評価したことが好感され、また6日にAI向け新製品を発表した、半導体のアドバンスト・マイクロ・デバイスも大幅上昇。エヌビディア、アップルも上昇。
8日 FRI
11月の雇用統計はやや強い結果で、インフレへの警戒が出て利上げ終了から、利下げ?開始の時期が少し遅くなるのではないかという見方も出ていましたが、ミシガン大学消費者信頼感指数では、消費者マインドに堅調さが確認され
株式市場をサポート。結局、主要3指数は、年初来の高値(終値ベース)を更新して、週末を迎えています。S&P500の11セクター別では、12/1比コミュニュケーション・サービス+1.4%、一般消費財+1.1%、情報技術+0.7%が上昇率のトップ3でした。
11月の米雇用統計
- 非農業部門雇用者数 前月比+19.9万人増(予想18.3万人/10月15万人)
- 失業率3.7% (予想3.9%/10月3.9%)
- 平均時給(前年比)4.0% (予想4.0%/10月4.0%)
- 平均時給(前月比)0.4% (予想0.3%/10月0.2%)
12月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)
- 69.4(予想 61.5 11月61.3)
日米の金利差縮小で円高!?
日本国内では、7日日銀の植田和男総裁が、参議院財政金融委員会で、マイナス金利解除に伴い政策金利をゼロ%に調整するかそれともプラス圏の金利に移行するか、そして利上げの速度については「その時の経済・金融情勢による」と述べ、
さらにこの後の岸田首相との面談が、憶測を呼び、円が瞬間、141円台と1日のうちに5円以上の円高(ドル安)となる場面がありました。
ドル-円の動く理由は、いろいろあげられますが、2022年から今年にかけての注目ポイントは、日米の金利差でした。日本側から見た場合、個人もそうですが、
特に大きなお金を運用する機関投資家(生保、年金、銀行、投資信託など)にとって、米国債の5%前後の利回りは、為替のリスクをとったとしても、1%にもならない日本国債の金利より魅力です。運用上、米国債への投資は、必要不可欠です。
米国債を買うためには、円を売って(円安)ドルを買う(ドル高)作業を伴います。日米の金利差が広がっていく過程では、盛んになるのは避けられません。それが、昨年来の円安、ドル高の大きな理由と捉えられます。
ところが米国の金利上昇が止まり、日本が金利が上がる環境が整ってくると日米の金利差縮小により、少しづつ米国債離れから、米国債を売る動きが出て今度は、これまでとは逆の動き、つまり円を買い(円高)戻す流れになってきます。
米国の利上げ打ち止め,利下げ時期模索→日本の金融政策の見直し→米国金利低下,日本の金利上昇→日米金利差縮小
→円高、ドル安?
一つのシナリオとして下記の表と一緒に参考にしてください。
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