セールスフォースの第一四半期の売上高は前年同期比11%増の91億3,000万ドル。特にサブスクリプション&サポートの売上が12%増。営業利益率も堅調。自社株買いや配当金支払いを通じて株主に26億ドルを還元するなど、財務内容の健全さをアピールできています。今回の記事ではセールスフォースの実力を再確認していきます。
- セールスフォースは1999年に設立された、CRM(Customer Relationship Management )の米国企業。
- 顧客がクラウドベースのCRMソフトウェアにアクセス、定期的に料金を払うビジネスモデル
- 年間の売上高は349億ドル
- Slackの買収により、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)サポートを推進
- 株主還元を強化
セールフォースは世界No.1のAI CRM企業です。
企業概要
- 顧客関係管理(CRM、シンボルと同じ)ソフトウェアを提供する米国企業。
- 1999年にマーク・ベニオフらによって設立
- ティッカー・シンボル:CRM
- クラウドベースのソフトウェアソリューション。
- 年間の売上高-349億ドル(およそ5.2兆円 /2024年1月通期)
- セクター:情報技術
セールスフォース(Salesforce)は、サブスクリプションとサポート収入を中心としたSaaS(Software as a Service)のビジネスモデルを展開。売上の90%以上を占めるこのモデルは、顧客がクラウドベースのCRM(顧客関係管理)ソフトウェアにアクセスするために定期的な料金を支払う仕組みです。
顧客は、Salesforceのプラットフォームを通じて営業、マーケティング、カスタマーサービスなどの多岐にわたる機能を利用可能。これにより、企業は自社のITインフラを構築するコストを削減し、スケーラブルで最新の技術を常に利用できるメリットを享受。また、継続的なサポートとアップデートが提供されるため、長期的な顧客関係を維持しやすくなっています。
またセールスフォースは2020年12月にSlackの買収を発表し、2021年7月に約277億ドルの取引を完了。この買収により、セールスフォースはSlackを活用して、デジタルHQ(本社)を構築し、どこからでも成功を収めるための基盤を提供することが狙いがあったと言われています。
買収の背景と目的
セールスフォースとSlackの統合は、現代のデジタルワークスペースの需要に応えるためのもの。企業が従業員、顧客、パートナーとシームレスに接続し、協力できる単一のプラットフォームを提供。これにより、Salesforce Customer 360とSlackの強力な組み合わせが実現し、企業は統一された業務環境でビジネスを推進できます。
Slack統合強化について
セールスフォースは、Slackの買収完了後の8月には企業のデジタルトランスフォーメーションを推進するために、Slackの統合をさらに強化する、新機能を発表。この統合により、チーム間のコラボレーションが一層強化され、業務効率が大幅な向上がはかられました。
新機能の概要
- Slack AI:
- パーソナライズされた回答:Slack AIは、会話内の質問に対してパーソナライズされた回答を提供し、ユーザーが必要とする情報を迅速に取得可能に。
- AI駆動の検索機能:AIを活用した検索機能により、Slack内のメッセージに対して簡潔な回答を提供し、ユーザーが必要な情報に迅速にアクセス。
- チャネルの要約:チャネル内の会話やスレッドを要約し、ユーザーがプロジェクトの進捗状況を素早く把握。
- セールスフォースとの連携機能:
- Salesforce Sales CloudとCustomer 360のデータアクセス:Slack上でSalesforceの顧客記録や商談情報にアクセスできるようになり、リアルタイムでデータの更新が可能に。これにより、営業チームは顧客とのやり取りを一元管理し、効率的に対応。
- 自動化機能:SlackのWorkflow Builderを使用して、営業プロセスを自動化し、業務のスピードを向上。たとえば、新しい商談がSalesforceからSlackに更新されると、自動的に通知を送るワークフローを設定。
- Slack Lists:
- プロジェクトとタスク管理:新しいリスト機能により、Slack内でプロジェクトやタスクを管理しやすくなり、チーム全体での進捗状況を把握しやすく。
セールスフォースは、引き続き革新的なソリューションを提供し、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援。またSlackの新機能と統合強化により、これらを利用する企業はより効率的かつ効果的に業務を進めることができるようになります。
2025年度第1四半期業績:成長とAIの未来
決算概要
2024/2-4月(Q1) | 2023/2-4月(Q1) | 前年同期比 | |
売上高 | 9,133 | 8,247 | +10.7% |
営業利益 | 1,709 | 412 | 4.1倍 |
当期利益 | 1,533 | 199 | 7.7倍 |
EPS | 2.44 | 1.69 | +44.4% |
*セールスフォースは1月を1年の決算としています。今回は、2024年の2-4月、4月末までの3ヶ月間(四半期)とする2025年fiscalの第1四半期(Q1)となります。
ハイライト
- 売上高: 第1四半期の売上高は91億3,000万ドルで、前年同期比11%増。恒常為替レートで見ても11%増。
-サブスクリプション&サポート売上高は85億9,000万ドル(前年同期比12%増加)。 - 営業利益率: GAAPベースの営業利益率は18.7%、非GAAPベースの営業利益率は32.1%。
- キャッシュフロー: 第1四半期の営業キャッシュフローは62.5億ドルで、前年同期比39%増。フリーキャッシュフローは60.8億ドルで、前年同期比43%増。
- 株主還元: 自社株買い22億ドル、配当金(0.4ドル)支払いで4億ドルを株主に還元。(2023年には配当実績なし。)
今四半期の売上高内訳
*円グラフにカーソルを各ジャンルの売上がわかります。単位百万ドル
株価推移
決算発表が嫌気され、5/30には前日比▼19.7%まで下落。その後は回復基調。
*株価は、各月末の終値です。5/30と6/6はその日の終値。チャートにカーソルを合わせると株価が確認できます。単位ドル
ガイダンス(会社計画)
セールスフォースは今後の見通しについても強気の姿勢を示しています:
- 第2四半期(5-7月)売上高ガイダンス: 前年同期比7%〜8%増の92億〜92億5,000万ドル。
- 通期売上高ガイダンス: 前年比8%〜9%増の377億〜380億ドル。(2024年は349億ドル)
- サブスクリプションおよびサポート収入: 成長率ガイダンスを前年比約10%増と予測。
- 営業利益率: 通年のGAAPベースの営業利益率ガイダンスは19.9%、non-GAAPベースの営業利益率ガイダンスは32.5%。
- 営業キャッシュフロー: 通年の営業キャッシュフロー成長率ガイダンスは前年比21%から24%に維持。
成長の要因
セールスフォースが今後も成長の要因として期待しているのが
1. AIの活用
SalesforceはAIを積極的に導入し、顧客との新しい接点を創出。
-CEOのマーク・ベニオフ氏「私たちは今、AIを活用して顧客とまったく新しい方法でつながるという、大きなチャンスの幕開けを迎えています」
-セールスフォースは世界No.1のAI CRMとして、企業がAIを効率的に利用し、ビジネス成功実現するのを支援する上で非常に有利な立場に。
<セールスフォースのAI導入の具体例>
- 富士通がセールスフォース生成AI「Einstein for Service」を導入、製品に関するお問い合わせ対応の工数を8割以上削減。
- 株式会社淵本鋼機は、AIによる商談確度の分析により過去最高売上高を達成。Salesforceの導入により価格競争の激化や顧客情報の共有不足、新規顧客開拓の課題などを解決。
- 株式会社ビックカメラはAI搭載のCRM「Salesforce Einstein」を導入し、退会予測分析を実施。解約に影響しそうな要素を抽出し、AIモデルを作成した結果、退会リスクの高い顧客を抽出に成功。
- ある小売業の企業は、Salesforce Einsteinを導入してコンタクトセンターの効率化を実現。
- 製造業の営業部門にもAIを取り入れることで、営業戦略の最適化や営業担当者のスキル均一化が可能。セールスフォースの製造業向けCRM「Manufacturing Cloud」では、顧客情報の管理や正確な需要予測、AIによる営業戦略や生産計画の最適化を実現可能にする。
2. キャッシュフローの強化
第1四半期の営業キャッシュフローは前年同期比39%増の62億5,000万ドル、フリーキャッシュフローは前年同期比43%増の60億8,000万ドルに達しました。このキャッシュフローの強化は、企業の財務的な健全性を示しています。
3. 株主還元の強化
自社株買いや配当金支払いを通じて株主還元を強化しています。エイミー・ウィーバー社長兼CFOは、「当四半期も規律ある利益成長を実現し、GAAPベースの営業利益率は18.7%で前年同期比1,370ベーシスポイント上昇、Non-GAAPベースの営業利益率は32.1%で同450ベーシスポイント上昇しました」と述べています。
今後の展望
セールスフォースは今後もAIの導入を強化し、顧客との関係を深化させ、強力なキャッシュフローと株主還元の取り組みを通じて、財務的な健全性を維持しつつ成長を続けることが期待されています。
まとめ
生成AIモデル開発の恩恵を受け需要好調な、エヌビディア等の一部半導体企業とは違い、セールスフォースのようなAIを組み込んだソフトウェア上のアプリ提供で売上を伸ばす企業には、そのソフトが本格的に普及するまでは、どうしてもAI特需の波に乗るにはタイムラグがあるようです。その辺りを今回の四半期決算で明らかにされ、株価が急落へとつながりました。しかし、
2025年度第1四半期の業績は、前年同期比で顕著な成長を遂げ、今後の見通しも明るいものとなっています。AIの導入やキャッシュフローの強化、株主還元の取り組みなど、多くの要因が同社の成長を支えています。決算後の株価の急落はありましたが、企業のAIへの投資の効果が顕在化してくれば、世界No.1のAI CRM(顧客関係管理サービス企業)としてのセールスフォースは再度注目を集めることが予想されます。
- セールスフォースは1999年に設立された、CRM(Customer Relationship Management )の米国企業。
- 顧客がクラウドベースのCRMソフトウェアにアクセス、定期的に料金を払うビジネスモデル
- 年間の売上高は349億ドル
- Slackの買収により、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)サポートを推進
- 株主還元を強化
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